特集 「多様化」する保護者にどう対応するか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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説明会・三者面談の充実で子どもへの理解を促す

 そこで、同校は3年前から保護者対象の説明会を拡充し、進路情報の提供に力を入れている。従来、保護者を学校に招く機会は、三者面談やPTA総会など年数回だったが、今では、ほかに全学年対象の進路講演会を年1回、PTA主催の「進路について語る会」を年1回、学年ごとの説明会を年数回開いている(図1)。

図1

 中でも重視するのは1年生4月の進路説明会だ。「塾依存の意識を切り替えてもらうには、入学時の意識付けが大切」(谷垣校長)と考えるからだ。3年間の進路行事の内容と趣旨を説明し、出席を呼びかける。
 「進路について語る会」は、あらかじめPTA役員が保護者の疑問や悩みを聞き、それらに教師が答える場として始まった。2、3年生のPTA役員を中心に運営するため、「この時期にはこういうことを知っておきたかった」など、保護者の視点に立った話題を提供できる。
 また、三者面談を充実させ、保護者一人ひとりの意識改革にも力を入れる。面談では、スタディーサポートの結果を活用し、成績以外にも、生徒の進路や学習に対する意識について話し合う。教師が注目するのは、「進路選択の保護者の受け止め方」の質問項目だ。「保護者に任されている」と答えた生徒の中には、親に相談できず、1人で悩んでいる可能性があるからだ。家庭での声かけや接し方について保護者にアドバイスし、家庭でのサポートをお願いする。
 「受験期の子どもとの接し方がわからないという保護者もいます。学校の指導方針を理解してもらうためにも、生徒の状況を正しく伝えることが大切です。また、面談を通して、保護者は家庭では見えない子どもの一面を知ることもできます。多面的に子どもを理解するための情報を伝えることで、教師に対する信頼も深まると期待しています」(堀内先生)
 このような取り組みの結果、スタディーサポートで「保護者に任されている」に「はい」と答える生徒の割合は、学年が上がるごとに減ってきている。ただ、各説明会の出席率は多くて2割ほど。06年度に行った保護者の意識調査では、進路情報の提供について「満足している」と回答した保護者は42%にとどまった。「共働き家庭が多い、自宅が学校から遠いなど、土曜日でも簡単に学校まで足を運べない状況が影響していると思います。また、小・中学校と違い、保護者の中に『地域の学校』という意識が薄いことも原因かもしれません」と谷垣校長は分析する。
 しかし、取り組みを縮小するつもりはない。堀内先生は「いつでも来てもらえる場を確保しておくことは必要です。今後は入学直後のPTA総会の出席率を上げ、一連の取り組みの理由を多くの保護者に伝えていきます」と意気込む。早期に「高校生の保護者」になってもらうことが、保護者の協力を得る鍵になりそうだ。


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