中学校の現場から キャリア教育


宮城県 仙台市柳生中学校

仙台市のベッドタウンとして宅地化が進む太白区に1996年開校。青少年赤十字(JRC)への全校加盟を通して、ボランティア活動の実践にも力を入れている。

生徒数 ● 740名
学級数 ● 22学級(うち特別支援学級2)

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VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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中学校の現場から

生徒の履歴をつかみ、今の指導につなげる

キャリア教育

宮城県 仙台市柳生(やなぎう)中学校

学んだことをグラフ化し自己理解や職業観の深化につなげる

文部科学省の「キャリア・スタート・ウィーク」が、2007年度から本格実施された。これは、子どもの勤労観、職業観を育てるために、中学校で5日間以上の職場体験を奨励する取り組みだ。国立教育政策研究所「公立中学校職場体験実施状況調査」(2005年3月)によると、職場体験学習を行う公立中学校は89.7%に上る。しかし、5日間以上という学校は6.8%だ。元々地域に事業所が少ない、1、2日なら受け入れてくれる事業所でも5日間となると難しいなどの課題もある。
 そうした事情の中、宮城県仙台市立柳生中学校では、3年間を通じた体系的な活動と5日間の職場体験で生徒の職業観を醸成し、成果を上げつつある。

「キャリア・スタート・ウィーク」のモデル校として取り組む

 柳生中学校は、2004年度から「総合的な学習の時間」にキャリア教育を取り入れ、「働くこと」をテーマに職場体験や地域貢献に取り組んできた。研究主任の藤井勝哉先生は、その背景をこう述べる。
 「本校の生徒は素直でおとなしい反面、受け身になりがちなことが、かねてからの課題でした。自分の進路や将来に真剣に向き合えるようにすることで、主体的に行動できる力を身につけさせたいと考えました」
 06年度に「キャリア・スタート・ウィーク」のモデル校になったあとも、狙いは同じ。1年生では「働くこと」についての多様な価値観に触れ、2年生では職場体験などを通して社会や地域貢献について考え、3年生では自分の夢や目標をイメージしながら活動する。働くことの意味を徐々に広げて体験させながら、最終的に自分の将来に引き付けて考えさせることが目標だ。
 1年生の活動は、家族や町の人へのインタビューが中心。近所や仙台市の中心街に出て、道行く人に「働くこと」の意味を尋ね、「働くこと」には多様な価値観があることを学ぶ。
 同校の特徴の1つは、学んだことや考えたことを、グラフや表など目に見える形で表現させる点だ。インタビューに使用するプリントも、生徒がイメージしやすいように、「生活のため」「社会のため」「夢・目標のため」の3つの指標のレーダーチャートにした(図1)。これは年間を通して繰り返し使われる。
 「当初は『働くのは生活のため』と考える生徒が大半で、レーダーチャートの形もいびつです。しかし、学習を重ねる中で、次第に『社会のため』『夢・目標のため』という考えが芽生え、レーダーチャートがバランスのよい形になっていきます。図にすることで、自分の内面の変化を客観的に知り、職業観を深められます」(藤井先生)
 この手法は、2年生以降の講演会や職場体験などの活動でも活用される。

【図1】「働くこと」の目的を捉えるレーダーチャート

図1:「働くこと」の目的を捉えるレーダーチャート

 

* 社会人の話を聞きっ放しで終わらせないように、生徒には、インタビューの内容をその都度リーフレットにまとめさせる。その際、グラフや表の形式を工夫し、生徒が学んだことを自覚できるようにしている


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