特集 生徒を大人にする「生徒指導」

中谷素之

▲大阪大大学院人間科学研究科准教授

中谷素之

Nakaya Motoyuki

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【COLUMN】

大阪大大学院人間科学研究科准教授・中谷素之

教師に対する信頼感が
内発的動機づけを高める

内発的動機づけを高めることが重要

 近年の生徒は、家庭や地域の教育力の低下もあり、規範意識や自分の行動に対する責任感が希薄だと言われています。しかし、義務教育と異なり、高校には自分自身で選択し入学してきた以上、生徒は自らの行動に責任を持つことが原則です。導入期指導の段階で、高校での規則やルールをしっかりと身につけさせ、守れない者にはペナルティーを与える。そうした枠組みをきちんと示し、自己選択に伴う責任に対する意識を促すのは大切なことです。
 ただ、厳しく指導しても、その価値を生徒が理解できなければ、指導は浸透しません。生徒によっては、教師の要求に応えられないこともあるでしょう。厳しく規範意識を教える一方で、生徒の意識にきちんと寄り添う姿勢も忘れてはなりません。
 導入期の段階で教師が厳しく統制すれば多くの生徒はそれに従いますが、それは外発的な動機づけによるものにすぎません。大切なのは、それをいかに内発的な動機づけへと昇華させるかです。

図1

 図1は、動機づけが内在化していく過程を示したものですが、大きな壁となるのが、「不安だからやる」や「バカにされるのが嫌だからやる」などの「取り入れ的動機づけ」から、「将来のため」といった「同一化的動機づけ」への移行部分です。とりあえず教師の指導を受け入れている段階から、外的な指導が内面で同一化された段階へと歩みを進めているわけですが、この壁をどう乗り越えさせるのかが課題です。


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