指導変革の軌跡 京都府立海洋高校「専門高校の特色を生かした学習意欲の涵養」
京都府立海洋高校

京都府立海洋高校

◎2008年に創立109年目を迎えた伝統校。ダブル3S(Sea、Ship、Seafood/S:進路保障、S:集中実習、S:資格取得)をキーワードに、水産・海洋のスペシャリストを育成する。03年に進学系学科である海洋科学科を設置。レスリングやボート、ウエイトリフティングなどで全国大会に出場。部活動でも顕著な実績を収めている。

設立●1899(明治32)年

形態●全日制/海洋科学科・海洋工学科・海洋資源科/共学

生徒数(1学年)●約100名

08年度進路実績●国公立大では、東京海洋大、京都教育大、和歌山大、三重大、長崎大、宮崎大、鹿児島大、琉球大、そして水産大学校を含めると9名合格。私立大には、近畿大、東京農業大、立命館大、龍谷大など延べ17名が合格。学校紹介による就職内定率は4年連続100%を達成(08年3月現在)。

住所●〒626-0074 京都府宮津市字上司1567-1

TEL●0772-25-0331

WEB PAGE●http://www1.kyoto-
be.ne.jp/kaiyou-hs/


矢野誓作

▲京都府立海洋高校副校長

矢野誓作

Yano Seisaku

教職歴27年目。同校に赴任して2年目。「かけがえのない高校3年間。一人ひとり、充実した日々を過ごし、確かな自信をつけてほしい」

上林秋男

▲京都府立海洋高校

上林秋男

Kanbayashi Akio

教職歴・赴任歴共に17年目。総務企画部長。「本校のすばらしい成果を日々発信していけるよう広報活動を工夫したい」

高木正夫

▲京都府立海洋高校

高木正夫

Takagi Masao

教職歴・赴任歴共に16年目。進路指導部長。「自分自身もプロとしての自覚を持って日々の業務に取り組みたい」

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指導変革の軌跡102


京都府立海洋高校「専門高校の特色を生かした学習意欲の涵養」

研究・実習を通した「高校初」への挑戦が生徒と教師の心に火をつけた

● 実践のポイント
「研究活動」「生産販売」「資格取得」の各プログラムによって、プロフェッショナル・アイズ(職業人の視点)を涵養する
3つのプログラムを通して涵養した学習意欲、職業意識を土台として、進路補習により基礎学力の定着を図る
高校初や全国でも珍しい取り組みの導入および高い目標設定によって、教師の意識改革を促す

卒業生の追跡調査からも学力不足が課題に

 京都府立海洋高校が京都府教育委員会の「学力向上フロンティア校」支援事業に指定されたのは、2007年4月のことだ。水産・海洋系の専門高校として初めて進学系学科である海洋科学科を設置し、進学指導にも力を入れた結果、ここ数年で大学進学者数は増えた。ただ、中下位層への指導は依然として課題だった。矢野誓作副校長は「中学時代に勉強を苦手とし、どこかひっかかりを持っている生徒が少なからず入学してくる状況に変わりありません」と話す。同校の進学者の多くは、推薦入試やAO入試に合格した生徒だ。「大学の授業についていけない」という卒業生の声も聞かれ、中退を防ぐためにも、学力の向上は大きな課題だった。
 学力不足は進学した生徒だけの問題ではなかった。2年前、進路指導部長の 木正夫先生が卒業生の離職率を調査したところ、2年間で約半数が職場を去る年があることが判明した。
 「企業に退職の理由を尋ねたところ、『考える力』の基礎となる数学的な思考力や読解力などの不足が原因であることがわかりました。離職率を下げるためにも、中下位層の学力を向上させる必要性を痛感しました」(高木先生)
 同校は「学力向上フロンティア校」事業計画の策定にあたり、中下位層の学力向上に焦点を合わせ、07年度に「プロフェッショナル・アイズ育成プログラム」(図1)を始めた。専門高校の特色である「研究・販売・資格」の3要素を柱としてプロフェッショナル・アイズ(職業人の視点)を育成。そこで培った学習への動機付けをベースとして、「基礎学力確認・伸長プログラム」によって基礎学力の向上を目指す。

図1

 育成プログラムの土台は、「研究・販売・資格」の3要素に対応する「研究活動」「生産販売」「資格取得」の各プログラムだ。社会とのつながりや達成感を感じさせることで、学問の魅力や意義、大切さを実感させ、学習に対するモチベーションを高めることを狙いとする。
 「資格取得プログラム」は、学力や進路希望に応じた資格取得を促す取り組みだ。資格取得は重点的に指導していたが、時期によっては検定の日程が過密になり、じっくりと学習できない生徒が見受けられた。そこで、同プログラムでは、検定日を全校体制として整理しただけでなく、資格総数7個以上を目指す「標準コース」、漢字や英語の検定に挑戦する「基礎力アップコース」などのモデルプランを示し、効率的な学習を可能にした。資格取得を奨励する狙いは、職業人としてのスキルアップだけではなく、学習に対する意欲を高めることにもある。
 「家庭学習が少ない生徒でも、資格のためには積極的に学習に取り組みます。資格取得を通して得た達成感を、教科学習にもぶつけてほしいと思います」(高木先生)


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