特集 「自立する高校生」をどう育てるのか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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質問のレベルが下がった
神奈川県立C高校

 授業だけでなく、何事も他人に頼るという傾向が強まっていることには、神奈川県立C高校の先生も懸念を示す。
 「日常生活でも学校行事でも、まずは自分で考えてみるという姿勢・態度が希薄になりました。良くも悪くも教師頼みで、非常に手間がかかります。
 私は英語科担当ですが、事前に辞書で下調べをしてくる生徒はほとんどいなくなりました。予習してくる生徒は授業後に決まって良い質問をしてきたものですが、今は授業で初めて学ぶためか質問のレベルが低い。部活動には意欲的ですが、自分で考え工夫して練習するというより、指示に従って動く傾向が見られます。
 行事では、ほかの人と協力して何かをしようという雰囲気が希薄です。個別に担任に言うことはあっても、自分たちで話し合って解決しようとはしません。だれかがリーダーシップを取ろうとしても、それに協力しようという感じがなく、クラス全体で何か一つのことをなし遂げるのが非常に困難になっています」

「頑張る」ことがかっこよくない
滋賀県立D高校

 生徒の安全志向については、滋賀県立D高校の先生から、生徒のいわゆる「KY(空気を読めない)」を気にする気質も影響しているのではないかという指摘があった。
 「髪を振り乱して『がむしゃらに頑張る』ことより、マイペースで無理をせず『それなりに頑張る』ことで、精神的に安定した受験生活を送ろうとしているように見えます。一人暮らしを夢見ることもなく、自宅通学を希望する生徒が増えています。いずれも、安全・安定志向の気質の典型として挙げることができます。
 自分の思いをある程度殺してでもまわりの空気を読んで協調性を重視する『KY』に敏感な気質を考えると、『何が何でも上を目指すという自分の態度はかっこよくないのでは?』と無意識のうちに自問自答してしまっているのではないでしょうか」
 今のこうした生徒に、先生方はどのように対応していこうと考えているのだろうか。福井県立E高校の先生は、授業や学校行事などを小・中学校のように多面的に研究し、それを指導に反映させることで、生徒の意識を変えられるのではないかと話す。
 「世間で言われるほど生徒の意欲が低下しているとは思いません。ただ、生徒の意識が変化していることは確かです。内容に興味が持てなかったり、教師に人間的な魅力や面白さを感じなかったりすると、授業にも教師にもついてこなくなりました。
 部活動やホームルーム、生徒会活動で生徒が生き生きしているのはなぜでしょう。生徒が主役になって、自分が主体的に活動しているという自覚を持っているからだと思います。これまでのように、『ここは入試に出る』『試験に出す』と言っても、関心のない生徒には何の効果もありません。
 小・中学校では、授業で生徒が主役となれる場面の設定や、教材の切り口について盛んに研究されているようですが、高校ではそうした研究はほとんどしていないのではないでしょうか。授業だけでなく、部活動や学校行事においても生徒の意識を変えられるように、教師自身が今までの方法にこだわらず、新しい視点で生徒を支援する体制をつくっていく必要があると思います」
 生徒の変化から、指導方法、そして教師の意識の変化も求められていることがうかがえる。


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