教える現場 育てる言葉
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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新人のやる気を向上させるアットホームな環境づくり

 しかし、クレームを受けた当人は、そこまで納得して素直に発表できるものではない。表彰や失敗談の公表は、下手をすれば社員の強い反発を招きかねない。だが加賀屋には、そんな反発を生じさせない独特の風土があるようだ。
 その一つは、新人を言葉だけで指導するのではなく、自ら率先して行動してみせることで教え込んでいくという伝統である。長子さんは、「教えることを必ず先にやって見せる」という。入社したばかりの新入社員も、「長子姉さんの指導にはとても説得力があります。まずは姉さんがやって見せてくれて、その後に『いっしょにやってみなさい』とおっしゃるからです」と語る。
  加賀屋のもう一つの風土は、アットホームな雰囲気づくりを重視している点だ。小田社長は「加賀屋は企業ではなく家業」だというが、こうした考え方も、日々の体験を通して新人たちの心にしっかりと焼き付けられていく。例えば次のような新入社員の言葉があった。
 「会長や女将さんも社員食堂で食事をしているし、館内ですれ違うと必ず『お疲れさま』といってくれます。同じ職場で同じ方向を向いて仕事をしているということを、強く実感します」
 長子さんも、「新人は自分の孫だと思って接している」と語る。加賀屋ではアットホームな雰囲気を大切にすることによって、新入社員への教育が指導≠ナはなく、親心≠ニして受け入れられているのである。こうした先輩社員の心情が確実に新人に伝わっていることは、次のような新人の言葉からも読み取れる。
 「長子姉さんは、『注意するのは期待しているからだよ』といってくれました。立派に成長した姿を早く姉さんに見せたいです」

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