指導変革の軌跡 和歌山県立桐蔭高校「進路学習の効果的な継続」
和歌山県立桐蔭高校

和歌山県立桐蔭高校

◎2009年に創立130年目を迎える伝統校。文武両道を校訓とし、創造性豊かな個性と判断力・実践力を備えた生徒を育てる。06年度に併設型中学校を開設し、中高一貫教育による「桐蔭教育」の一層の浸透を目指す。07年度は卓球部、陸上競技部、剣道部、登山部、囲碁部、放送部などが近畿大会、全国大会に出場。

設立●1879(明治12)

形態●全日制/普通科・数理科学科・総合人文科/共学

生徒数●1、2学年各約280名、3学年約320名

08年度進路実績●国公立大には北海道大5名、東北大1名、東京大3名、名古屋大6名、京都大8名、大阪大12名、和歌山大46名、大阪府立大15名など221名が合格。私立大には、慶應義塾大、早稲田大、同志社大、立命館大など延べ357名が合格。

住所●〒640-8137 和歌山県和歌山市吹上五丁目6-18

TEL●073-436-1366

WEB PAGE●http://www.
http://www.toin-h.
wakayama-c.ed.jp/


小川敬文

▲和歌山県立桐蔭高校校長

小川敬文

Ogawa Takafumi
教職歴35年。同校に赴任して3年目。「教えるとは共に希望を語ること、学ぶとは心に誠実を刻むこと。それを生徒に伝えていきたい」

歌 保晴

▲和歌山県立桐蔭高校

歌 保晴

Uta Yasuharu
教職歴24年。同校に赴任して16年目。教務部長。「生徒には『人事を尽くして天命を待つ』という気持ちで努力してほしい」


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指導変革の軌跡112


和歌山県立桐蔭高校「進路学習の効果的な継続」

取り組みを形骸化させない工夫が
進学実績の向上を支えた

● 実践のポイント
大学教員による出張講義を充実させ、生徒の進路意識を育成する
「総合的な学習の時間」で職業・学問研究を行い、課題発見・解決能力を育てる
週1回の担任会で進捗情報と改善点を話し合う

低迷期の試行錯誤が環境変化への対応力を高める

 和歌山県立桐蔭高校は旧制中学校を前身とする県下の伝統校だ。創立以来、地域の進学校として中等教育を牽引してきた。特にここ数年の進路実績は目覚ましく、2007年度入試の現役国公立大合格者数は前年度から30人以上も増え、ここ十数年で最高の実績を残した(図1)。
図1
 しかし、同校は安定してその座を得ていたわけではない。和歌山市内の公立高校が南北学区に二分割された1979年以降、近隣の学校が進学実績を伸ばしてきたからだ。03年度の学区撤廃時には、130年近くの伝統がある同校は「桐蔭ブランド」として市民の意識に根付いているために有利だろうと、周囲には見られていた。しかし、同校に楽観ムードはなかった。教務部長の歌保晴先生は、当時の状況を次のように振り返る。
 「本校は駅から遠いなど客観的な条件は必ずしもよくありません。進学面でも、当時は地域にアピールできるほどの実績がなく、優秀な生徒が集まるという確信はありませんでした。学区撤廃を機に、地域の目を本校に引き付ける必要性を強く感じていました」
 総務部長の嶋田博文先生は、「『桐蔭有利』とまわりに言われることで、我々の気持ちが緩むことを何よりも恐れました」と打ち明ける。こうした危機感から、学区撤廃前には教師全員で分担して市内全域の中学校で入試説明会を行った。強調したのは「総合力」だ。授業や補習などの学習活動、部活動や学校行事などの特別活動を両輪として、「全人的な素養を涵(かん)養する」というバランスの良さをアピールした。特に、強調したのは授業実施率の高さだ。教師が出張しても極力自習にはしない。その日のすべての時間割を変えてでも、必ず授業を実施する。事実、同校の授業実施率は例年98%に達する。
 こうした同校の地力は、学区撤廃前の十数年間、同校が自助努力を重ね、校内の取り組みをブラッシュアップし続けてきた成果だ。
 「進学実績が下がってきた15年ほど前から、さまざまな取り組みを試しました。0限授業や新入生合宿、『桐蔭総合大学』など、進学実績の低迷を脱するために試行錯誤を繰り返す中で、良いものは残り、効果の薄いものは消えていきました。その過程で、本校の骨格が形成され、いざ学区撤廃となったときに生きてきたのではないでしょうか」と、歌先生は分析する。

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