ベネッセ独自の調査・研究に基づく教育情報を発信。学校向け情報誌に掲載している教育動向や学校の実践事例、子どもや教育に関連したさまざまな調査の報告書、調査データなどを公開しています。
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2009年6月号
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私を育てたあの時代、あの出会い
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先輩教師の言葉
収穫を予感した生徒だから
厳しい指導についてきた
元・群馬県立太田高校
吉原一夫
生徒は太鼓に似ていると私は考えていました。強くたたくほど強く響く、と。だから、生徒には厳しく接しました。同窓会ではいつも「先生にはいろいろやられた」と昔話に花が咲きます。
ただ、生徒はどんなに怒られても、はい上がろうとしました。成績の悪い生徒ほど、早朝から問題集を抱えて職員室前の廊下で私の登校を待っているんです。昼休みも質問攻めで、こっちは食事をする暇もありません。でも、そういう生徒ほど、私も驚くくらい大きく伸びたものです。
怒られても、けなされても、それでも生徒が教師の元から離れていかないのは、生徒にとって「収穫」があるからです。もしも得るものがなければ、生徒は決してこちらには来ません。だから、私は高橋先生にも「生徒が質問に来なくなったら、それは生徒から見限られたということだぞ」と話しました。そして、新任の先生がどのような授業をしているか、必ず見に行っていました。高橋先生の授業を見て、力のある先生が来てくれてよかったと安心しましたし、母校の後輩を弟のように見守るその姿勢をうれしく思いました。
生徒はこちらが本気で怒ったことは、必ず意図を理解してくれました。「お宅の生徒が問題を起こした」と学校外から連絡を受けた時は、急いで現場に駆けつけるや、心の底から本気で生徒を怒りました。相手に謝罪するだけでなく、私が目の前で本気で怒るからこそ、その場が収まることもある。それは学校も社会も同じです。そして怒られた生徒も後日「あの時はお世話になりました」と礼を言いに来たものです。生徒も、こちらの思いを確実に受け止めてくれていたんです。
生徒が教師の言葉、教え、そして怒りをしっかりと受け止められるかどうか。やはりそれは、教師が生徒に「収穫」を予感させることができるかどうかにかかっています。学校全体が頑張った先を見通して一致団結していれば、どんなに苦しくても生徒はついてくるはずです。
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