特集 「大学入試分析」を生かす
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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09年度入試分析から見えてきた課題

 鍛えられた高い分析力により、入試傾向や要求学力を読み取り、指導改善につなげていることも同校の強みだ。大須賀先生は、09年度入試の英語を次のように総括する。
 「センター試験の英語については、出題者が新学習指導要領をかなり意識していると感じました。難解な単語や文法こそないものの、長文の分量が増え、英語を英語のまま読み、瞬時に意味を把握する力が問われています。リスニングに関しては、付け焼き刃の対策では高得点が望めない内容でした。いずれも『使える英語』を目指す新学習指導要領をにらんだ試験問題だったと思います。
 長文読解問題については、センター試験対策に偏りすぎると、かえって難関大の個別学力試験で出題されるような長文がじっくり読めなくなる可能性があることを、教師間で共通意識を持つ必要があります。リスニングに関しては、もし、本気で対策に取り組むなら、1年生からの指導を根本的に変える必要があるでしょう。特に、大事なのは2年生。現行の教育課程では1年生でOC(オーラル・コミュニケーション)があり、3年生はライティングの中でヒアリングも扱うので、空白となる2年生の指導をいかに工夫するかが問われると思います」
 東京大の英語は、例年通りのよく練られた問題だったという。09年度の要約問題は、アメリカの「ラッキーペニー」をテーマとする文章だった。ペニーは1セント銅貨の別称だが、「ささやかだけど大事なもの」のたとえとして用いられた。設問自体はそれほど難しくはないが、「ペニー」が比喩(ゆ)であることを読み取れなかった生徒には全く理解できなかったかもしれないと、大須賀先生は指摘する。文学的な文章の読解力や感性が求められる良問だったが、それだけに、生徒には英語力にとどまらない総合的な力が求められる。
 「国語が不得意な生徒は、数学にせよ、英語にせよ、一定以上の難問には歯が立ちません。多くの読書体験やさまざまな生活での経験が必要なのです。そうした経験の大切さを生徒に繰り返し伝えたり、低学年時から読解力の向上に取り組んだりといった、地道な取り組みを続けていくしかありません」と、神谷先生は力説する。
 地道な入試問題分析が、授業改善へのヒントをもたらしていることがうかがえる刈谷高校。入試分析が単なる受験対策にとどまらない教育的営みであることを、改めて感じさせてくれる。

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