特集 「大学入試分析」を生かす
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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生徒の個別学力試験での力を読みきること

 学級別検討会後、1回目の二者(または三者)面談を行い、担任と生徒とで出願校をすり合わせ、全体検討会で全生徒の出願校を検討する。全体で行う利点は、データに基づいて客観的で冷静な検討ができることだ。
 参加するのは、進路指導部、教科担任と大学入試に精通したベテラン教師ら、総勢約30人。「A大の経済学部の個別学力試験はこういう傾向がある。この生徒には厳しいのは事実だが、英語が伸びてきたので、個別学力試験で取り戻せる可能性は十分ある」といった多角的・総合的な判断が可能となる。ポイントは、教師が大学入試問題を深く把握した上で、生徒が個別学力試験で発揮できる力をどこまで読むことができるかだ。
 担任は検討会の結果を持ち帰り、2回目の学級別検討会を経て、二者面談で出願校を決める。1人の生徒について多角的に何度も検討を重ねるだけに、最終的な結果に対する生徒や保護者の満足度は高いという。

全校体制の指導により入試分析の実効性を高める

 同校の強みは、入試分析の精密なノウハウだけでなく、膨大な労力を必要とする取り組みを全校体制で進められる点にある。
 「人海戦術に頼る面があるのは確かです。しかし一方で、一人ひとりの教師が、学校全体の一体感の醸成、若手教師の研修という面での成果を意識しています。それが、取り組みの実効性を高めると共に、形骸化も防いでいるのです」(平塚先生)
 個別学力試験の合格発表時期には、1・2年生の教師も結果を注視する。教師の意識の高さの表れといえよう。
 今後の課題は、3年間の指導の流れを整理し、早期から受験態勢を整えることだ。同校には部活動に全力を注ぐ生徒が多く、高校総体が終わって志望校を絞り込む段階で、必要な学力がないために志望のランクを下げてしまう生徒が毎年一定数いる。
 「全国偏差値で50を切る生徒、『自分はもうあきらめた』と受験から背を向ける生徒を1人でも少なくしたいというのが、我々の強い思いです。入試を見越して、各学年・学期ですべきことを共有し、その過程を検証できるシステムの構築が急務と考えています」と平塚先生は強調する。
 そのための素案は、ほぼできているという。低学年時からの入試を見据えた指導の充実が同校の課題だ。

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