指導変革の軌跡 静岡県立静岡高校「初期指導強化」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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成果の出た取り組みは他学年でも導入し、全校で共有化

 同校では、進路指導課が主導し、成果の出た取り組みを学校全体で共有している。安定した進路実績のためにも、進路指導課がパイプ役となりノウハウの共有・平均化を促す必要がある。
 まず、家庭学習時間記録シートを1、2年生で導入した。数年前の3学年団や現3学年団が実施し、生徒把握に効果を上げていたからだ。家庭学習時間やその日の感想、反省を毎日記入、提出させ、担任がコメントを書いて返却する。今後は蓄積されたデータを入力して、学年・学級全体の傾向を把握し、課題発見や指導改善に活用する予定だ。
 現3年生が2年次に参加した東京大オープンキャンパスは、09年度には6月に1、2年生合同で実施した。参加者は1年生106人、2年生65人と、予定の倍の人数となった。このオープンキャンパスは、大学主催ではなく、卒業生の東京大教員の協力を得て、同校だけを対象に講演会や研究室訪問、図書館見学を行うというもの。目玉は、同校卒業の現役東大生との交流会だ。パネルディスカッション形式で質疑応答を行い、その後、希望者が直接、先輩と懇談する時間を設ける。ほとんどの生徒が残り、食い入るように先輩の話に耳を傾けていたという。  
 「生徒は、教育、研究、設備、あらゆる面で東京大の良さを感じたようです。特に関心を寄せていたのは、進学振り分け制度でした。数学が得意なある卒業生は、東京大で数学を極めるつもりでしたが、情報関連の科目の授業でコンピュータが面白くなり、計数工学を専攻しました。これも、3年次に専攻分野を決定できる東京大だからこそできること。進路に迷う生徒には、制度面の特徴が魅力的に映ったようです。また、先輩のさっそうとした姿に魅了され、東京大へのあこがれを一層強くした生徒も多くいました」(福田先生)
 生徒の事後アンケートを分析すると、成績によって興味を持つ視点に違いが見られた。成績上位層は研究の内容、中位層は先輩との触れ合い、下位層は東京大への訪問自体の記述が多かった。今後は参加者のその後の学習時間の変化を追い、指導に生かしたいとしている。
 09年6月に行った3年生対象の東京大・京都大合同説明会には、前年の倍の60人が集まった。2年前には4、5人であった難関大志望者対象の放課後講習も、09年度は約50人が参加した。
 難関大志望者が増えれば、それに見合う学力を身に付けさせなければならない。09年6月には、教師の指導力向上のため、3年生の教師が中心となり、東京大、東京工業大、京都大、大阪大、静岡大など11大学の入試問題分析に取り組んだ。傾向と対策、お薦めの参考書、夏休みの勉強法などをまとめ、冊子にして配布。次年度以降も作成し、夏休みの家庭学習に活用させる予定だ。

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