30代教師の情熱
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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現在の私
「何をすればよいのか分からない」卒業生の言葉で指導を見直す

 結果として、1期生から数人が難関国公立大に合格しました。この経験から5期生の担任になった時、最初はスパルタ指導を貫きました。しかし、だんだんと違和感を持つようになったのです。きっかけは、志望校に入った卒業生がぽろっとこぼした言葉でした。
 「大学に入ったけれど、何をすればよいのか分からない」
 頑張って難関大に入ったのに何を言っているんだ、と最初は思いました。しかし、その卒業生は明らかに大学生活が楽しそうではありませんでした。一方、1期生の中に、志望校に合格できずに地元の看護学校に進学しながら、その後、4年制大に編入した生徒がいました。その卒業生は、就職報告時に「高校時代にじっくり将来を考えられてよかった、したい仕事が見つかりました」と、生き生きとした顔で語っていました。
 難関大に入っても、したいことが見つからないのでは意味がない。高校時代に見つからなかったとしても、将来への種をまくことが大切なんだ――。私は気付かされたのです。
 今、私は生徒に「将来は何をしたいのか」と語りかけるようにしています。どのような仕事をしたいのか、仕事を通してどう社会に貢献していくのか。挑戦したいことや興味・関心を徹底的に掘り下げ、その分野につながる学部・学科を探させます。そして、全国からその分野に秀でた大学を見つけさせます。大学名や単に資格が取れるからといった安易な決定は認めず、何度も考えさせ、生徒自身が自分の夢を語れるようになるまで待ちます。
 前年度に担当したある生徒は、3年生の11月にやっと、本当にしたいことを口にしました。何度も話し掛けていましたが、なかなか教師の私には言い出せなかったのです。その後は、晴れ晴れとした表情になり、停滞していた成績も伸び、最終的に志望校に合格しました。私は、教師としての自分を信頼してもらう重要性を痛感しました。早い段階で信頼関係を築くにはどうすればいいのか、試行錯誤を続けています。生徒との関係づくりはもちろん、定期的な保護者会の他にランチミーティングなども設けて、保護者にも自分の思いを伝えています。もう二度と「何をすればよいのか分からない」と言う生徒を出さないために、安心して自分の進路を考え、語ることができる環境づくりに今、挑んでいます。

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