指導変革の軌跡 岩手県立西和賀高校
酒井孝子

▲岩手県立西和賀高校校長

酒井孝子

Sakai Takako
教職歴36年。同校に赴任して2年目。「課題を感じたら、必ず『手立て』『対策』を実行するよう心掛けている」

菅原善致

▲岩手県立西和賀高校副校長

菅原善致

Sugawara Yoshinori
教職歴28年。同校に赴任して1年目。「努力は必ず報われる。今、何をすべきかを定め、前進あるのみ」

VIEW21[高校版] 先生方とともに考える 新しい進路指導のパートナー
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「分かる授業」が成績下位層の意欲を高める

 学校の荒れへの対策というと、まず生徒指導に切り込むのが一般的だ。もちろん、同校でも、校則違反や服装・容儀の乱れを厳しく指導し、破損した箇所はすべて同じ色の合板を張って補修するなど、環境整備・美化を徹底した。しかし、新たに規則をつくったり、点検をより厳格にしたりといったことは行わなかった。
 最も留意したのは、生徒に徹底的にかかわり、学校・地域に対する誇りや愛着を持たせることだ。熱心に指導して積極的に大会に出場し、生徒が活躍できる場面をつくった。そうして、弁論大会で外務大臣賞を受賞することや、ボート部がインターハイ連続出場をすることなどを通して、生徒は自信を持つようになっていった。
 教科指導では、国・数・英で習熟度別授業を取り入れた。ただし導入当初は、生徒のためになる取り組みなのかどうか、確信を持てなかったという。菅原善致(よしのり)副校長は次のように述べる。
 「下のクラスになった生徒の自尊心が傷つくのではないかと心配でした。しかし、実際には成績下位層の生徒ほど、喜んで授業を受けていました。生徒と話してみると、『中学時代は授業が全く分からず、座っているのがつらかった。だから、授業中に立ち歩いたり、廊下に出たりした。でも、今は授業が分かるし、質問をしても先生が丁寧に教えてくれるから授業が楽しい』と言うのです。中学校レベルの基礎的な内容であっても、『授業が分かる』ということが、生徒の気持ちが学校に向く動機になるということを感じました
 習熟度別授業は、各学年2クラスの小規模校であるために、運営で厳しい面があった。国・数・英の3教科をそれぞれ3クラスに分けて授業を行うことにしたが、3教科の教師は2人ずつしかいないため、3クラス同時に授業を行うことができなかったのだ。そこで、苦肉の策として、体育科、家庭科、音楽科の教師に臨時免許で学力が低いクラスの指導に当たってもらうことを決断した。
 「通常なら反対意見が出て当然なのですが、先生方は快く引き受けてくれました。教師全員が危機意識を共有し、学校を何とかしたいという思いを抱いていたからだと思います」(菅原副校長)
 教科外の中堅教師が、その教科の教師に積極的に指導法を相談する姿も日々見られたという。

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