特集)学力下位層の拡大にどう向き合うか
堤隆一郎

▲広島県立広高校

堤隆一郎

Tsutsumi Ryuichiro
教職歴32年。同校に赴任して2年目。進路指導主事。モットーは「理想は高く、姿勢は低く」

酒井義彦

▲広島県立広高校

酒井義彦

Sakai Yoshihiko
教職歴25年。同校に赴任して6年目。教務主任。「『学問に王道なし』の精神を生徒に伝えていきたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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普段の教育活動でこそ成績中位層の指導を強化

 同校の指導で特筆すべき点は、学力層の拡大が課題という中でも、まず、生徒の大多数を占める成績中位層に目を向け、「授業第一主義」を徹底していることだ。同校が最大の課題とするのは、偏差値40台後半の生徒を、いかに50台に引き上げるかだと、進路指導主事の堤隆一郎先生は話す。
 「本校の目標は、文武両道を目指しながら、国公立大合格率50%を達成することにあります。そのためには、人数の多い成績中位層の指導を最も重視する必要があります。上位層と下位層の指導だけに力を入れていたのでは、目標は達成できません。本校には、実力はありながら本気で勉強に取り組まないために、偏差値40台でとどまっている生徒が多くいます。そうした生徒を、いかに偏差値50〜55に引き上げるかが、目標達成の上で大きなポイントだと考えています」
 進研模試の偏差値データを見ると、1年次の7月模試は平均55前後あるが、3年次の7月には50にとどまるのが常であるという。
 生徒数の多い成績中位層を伸ばすためには、普段の授業における指導の工夫が重要になる。家庭学習の習慣付けにも力を入れ、特に数学と英語は、学習時間が大きく影響すると考え、1年生から3年間、毎日、他教科も含めた学習記録を付けさせる。1週間ごとにデータを出し、学習時間が少ない生徒、学習内容に偏りがある生徒には、面談をして修正を促す。
図1:家庭学習時間の推移
 学習習慣付けのために、模試も活用する。その一つは、前回の模試で判明した弱点分野について試験を行う「ミニ中間」だ。模試に対する意識付けと弱点分野の克服が目的だが、中間考査と期末考査の間の学習時間が最も少なくなる時期(図1)に試験を課し、学習時間を増やしたいという意図もある。
 「生徒の学習時間は、例年、定期考査の直前に跳ね上がるものの、考査後はその反動で大きく下がる傾向にあります。ここを下げずに家庭学習を続けさせることで、中下位層が増えるのを防ぎたいと考えています」(酒井先生)
 成績中位層の中でも下の方の層については、下位層とならないように「教科別面談」を実施。特に成績が悪かった教科について、理由は何かを教科担任と話し合い、今後の方策を考える場を設けている。苦手科目だからと質問しにくかったという生徒でも、教科担任とじかに面談することによって、その後の関係づくりにもつながるというメリットもある。

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