指導変革の軌跡 宮城県・私立古川学園中学校・高校
俣野聖一

▲古川学園中学校・高校教頭

俣野聖一

Matano Seiichi
教職歴22年。同校に赴任して17年目。「徳、孤ならず。必ず隣あり」

阿曽等

▲古川学園中学校・高校

阿曽等

Aso Hitoshi
教職歴・赴任歴共に12年。2学年主任。「何事にも手を抜かず、一生懸命取り組んでいきたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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一歩引いた指導が生徒自らの弱点克服を促す

 目指す方向は定まったが、これまでの指導の在り方を根本から変えたわけではなかった。学校の持ち味は残しながら、生徒が自らやる気を高められるように取り組みを見直した。
 毎日行う補習は、終了を1時間早く切り上げ、毎日19時30分までとした。2泊3日の春期勉強合宿、5泊6日の夏期勉強合宿(コラム参照)でも、普通科設置当時は午前0時を越えて補習をしていたが、メリハリを付けて午前0時前には就寝とした(現在は23時)。日々の課題の出し方も工夫した。
 「例えば、小テストでは、以前は範囲を示し、それに合った課題をできるだけ多く出していましたが、今は出題範囲を示すだけです。当初は、成績が下がるのではないかと不安を抱く教師がいましたし、保護者からは『これで大学受験は大丈夫なのか』という不安の声が多数寄せられました。しかし、生徒は質問しに来たり、テスト範囲に合わせてこういう課題がほしいと言いに来たりするようになり、結果的に成績が伸びました。生徒に判断させることによって、かえって生徒自身が自分の弱点を見つけ、それを克服する方法を主体的に考えるようになったのです」(阿曽先生)
  行事や課外活動は、生徒の意欲を高めるという観点から見直した。その一つは、「大学見学研修会」だ。以前は施設見学だけだったが、学習への取り組みの強化を狙い、各学年の位置付けを明確にした。1年次は東京大や慶應義塾大、早稲田大を見学し、大学のイメージをつかむ。2年次は東北大のオープンキャンパスに参加し、学問とは何かを知る。3年次は志望校、あるいは類似する大学のオープンキャンパスに参加する。志望校受験への意欲を高めると共に、大学生活をイメージさせるためだ。いずれの学年でも卒業生との懇談会を行い、高校時代の体験や大学生活について直接話を聞く機会を設けた。
 こうした学校全体の動きに触発され、各学年や学級独自の取り組みも活発になった。1年生では、1年間で生徒全員が何らかの学校行事の実行委員を務める。生徒が自己効力感を高めると共に、互いを認め合える環境をつくるためだ。3学年主任の本田敦久先生の学級では、2年生の終わりの春期勉強合宿で「5か月後の自分へのメッセージ」を書かせ、それを3年生の夏期勉強合宿で各自に返却した。
 「メッセージを読んでこの5か月を振り返ると同時に、受験本番となる5か月後を強く意識してほしいと思いました。そうすることで、一人ひとりが自分の置かれている状況に気付き、自律的に行動できるのではないかと考えました」(本田先生)
写真
夏期勉強合宿での自習時間は、夕食と入浴を済ませた後の約3時間ある。黙々と自分の勉強に取り組む

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