30代教師の情熱
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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現在の私
数学の教養を深め学習意欲を喚起させる授業がしたい

 3年間指導した生徒の卒業後、2009年4月から半年間、沖縄県立総合教育センターで教科研修を受け、生徒が投げ掛けてくれた課題にじっくり取り組みました。テーマは「数学のよさを感得(かんとく)させる数学史活用の試み」です。1年生の三角比の単元で数学史を取り入れた指導案をつくりました。
 そして、これに沿った授業を本校で行いました。最初の授業では、約3500年前のエジプト文明に「リンド数学パピルス」という問題集があることを示し、その中の三角関数のタンジェントの起源となる問題に取り組ませました。問題集は日本語訳が出版されているので、私はそれを入手して生徒に見せました。世界史でオリエント文明の分野が終わったばかりとあって、古代エジプト文字のヒエログリフで書かれた問題に生徒は高い関心を寄せました。数学に単に数字だけではない「文化のかおり」を感じてもらえたようです。授業後のアンケートでは、数学が苦手な生徒から「歴史という別の切り口で数学を捉えられて、面白かった」という声が寄せられました。
 今は、他の単元でも教科書とは違う切り口で授業を展開できないかと、指導案と教材の作成に臨んでいます。研修時とは違い、じっくりと教材に向き合うことは難しいのですが、素材を探しては授業で生徒に話しています。生徒から予想に反する反応が返ってきて、うまく授業が展開出来ない場合は、教科書に戻ります。教科書に沿った授業を行ってきた経験があるからこそ、教科書外のことを伝える授業に挑むことが出来るのだと思います。
 課題は、私自身の数学的な教養がまだまだ足りないことです。先輩の先生方と授業や数学について話をしていると、私の知らない深い知識を授業に織り交ぜて生徒を引きつけていることに感心します。その度にもっと勉強しなければと痛感させられています。また、限られた授業時間で受験指導をしつつも、教科書にとどまらない生徒の好奇心をくすぐるような知識を盛り込む――このバランスがとても難しいと感じています。
 研修を通して、授業の仕方も変わりました。以前は教科書とチョークだけで授業をしていましたが、今はプロジェクターで画像を見せながら説明するなどの工夫をしています。最近の生徒には問題文から立体を想像するような力が不足していると感じていました。そこで視覚的に訴えかける手法を用いたところ、通常よりも生徒の理解は深まっているようでした。忙しさからなかなか挑戦することが出来なかったのですが、この経験から改めて日々の授業の見直しが大切だと感じました。

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