大学生の学習・生活実態調査報告書
   PAGE 10/13 前ページ 次ページ

大学受験対策

 「受験期の学習時間」の平均は4.5時間であった。しかし、「0時間」(6.1%)、「1時間」(9.0%)など、実質的には受験勉強をしていると思えない回答もみられた。「大学受験対策として取り組んだこと」は、従来型の教科学習が多くみられた一方、「推薦・AO入試」による入学者を中心に、「小論文の準備」「面接の準備」「志望理由書・自己推薦書作成」など、従来型の教科学習とは異なることに対策として取り組んだ者も少なからずみられた。こうした傾向には、学部系統による差異もみられた。

Q
●受験の追い込み時期のとき、平日に学校での授業以外で、1日平均で何時間くらい勉強していましたか。学習塾や予備校、家庭教師について勉強する時間も含めてください。なお浪人をした方は、現役のときの勉強時間をお答えください。
●大学受験対策として取り組んだことはどれですか。あてはまるものすべてをお選びください。
 少子化の進行と高等教育収容力の維持を背景として、易しくなった大学入試がもたらす「脱受験競争時代」が到来している*1。また、大学入学者選抜方法も多様化しており、「大学受験対策」の中身も従来とは変容している可能性もあるだろう。ここでは、その実態を探るべく、現在の大学生が取り組んだ「大学受験対策」として、「受験期の学習時間」および「大学受験対策として取り組んだこと」についてとらえていく。
 まずは、「受験期の学習時間」についてみていこう。図1-2-7は、「受験期の学習時間」を示したグラフである。平均値は4.5時間であった(詳細は巻末の基礎集計表を参照)。「8時間」「10時間」といった長時間の回答が少なからずみられた一方(それぞれ6.9%、5.4%)、「0時間」「1時間」といった実質的には受験勉強をしていると思えない回答も示された(それぞれ6.1%、9.0%)。
  • *1 たとえば、ベネッセ教育研究開発センター『第4回学習基本調査・国内調査報告書・高校生版』(p.14〜19、2007年)などを参照。
図1−2−7 受験期の学習時間(全体)
 つづいて、「大学受験対策として取り組んだこと」についてみていこう。図1-2-8は、「大学受験対策として取り組んだこと」を複数回答としてたずねた結果である。「センター試験に対応した教科学習」が66.8%と最も多く、「私立大学入試に対応した教科学習」が43.8%、「国公立二次試験に対応した教科学習」が39.0%と続いている。これらの結果からは、「大学受験対策」の内容は、依然として教科学習中心であることがうかがえる。
 その一方、「小論文の準備」(26.5%)、「面接の準備」(25.7%)、「志望理由書・自己推薦書作成」(21.1%)など、従来型の教科学習中心の「大学受験対策」とは異なる対策に取り組んでいた者も少なからずみられた。
図1−2−8 大学受験対策として取り組んだこと(全体)
 彼らは、どのような受験方法で大学に入学したのだろうか。図1-2-9は、「大学受験対策として取り組んだこと」を入試方式別*2に示したグラフである。「推薦・AO入試」による大学入学者では、従来型の教科学習よりも、「面接の準備」(62.9%)、「志望理由書・自己推薦書作成」(55.0%)、「小論文の準備」(42.2%)に取り組んだ者のほうが明らかに多い結果となった。入試方式により、「大学受験対策」として取り組む内容が異なることは明らかであり、大学入学者選抜方法の多様化に伴い、「大学受験対策」も多様化していることがみてとれるだろう。
  • *2 1章第2節「大学受験のときの入試方法」を参照。
図1−2−9 大学受験対策として取り組んだこと(入試方式別)
 最後に、「大学受験対策として取り組んだこと」を学部系統別に示したのが表1-2-3である。生活科学・芸術・総合などを含む「その他」では、「小論文の準備」(37.6%)、「志望理由書・自己推薦書作成」(34.2%)、「面接の準備」(34.9%)、「実技(体育・美術・音楽・デザインなど)」(10.7%)といった、従来型の教科学習中心の「大学受験対策」とは異なる対策に取り組む比率が、全体平均よりも顕著に高い結果となっていた。
 これに対し、「理工」「農水産」「保健その他」といった理系学部系統や「教育」では、「センター試験に対応した教科学習」や「国公立二次試験に対応した教科学習」に取り組む比率が、全体平均よりも顕著に高い結果となった。なかでも、「国公立二次試験に対応した教科学習」への取り組みは、「理工」(55.0%)、「農水産」(60.0%)、「保健その他」(57.2%)、「教育」(54.5%)のいずれの学部系統でも、全体平均より10ポイント以上高い結果となっており、他の学部系統との二極化が明らかに示されている。さらに、保健衛生・医・歯・薬学部などを含む「保健その他」は、「小論文の準備」(38.9%)、「面接の準備」(46.6%)も全体平均よりも10ポイント以上高く、大学受験対策として多様な準備を強いられており、高校1・2年生のときから複数の学習機会を積極的に利用している*3 者が目立つ。
  • *3 第1章第1節「授業以外での学習機会」(表1−1−14)を参照。
表1−2−3 大学受験対策として取り組んだこと(全体・学部系統別)
   PAGE 10/13 前ページ 次ページ
目次へもどる 調査・研究データ