「データで考える子どもの世界」
大学生の学習・生活実態調査報告書
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第2章 大学生活について

第1節 大学生の生活経験と適応意識

大学志望度と満足度

 現在の大学・学部に進学したときの気持ちについてたずねたところ、およそ8割の学生は肯定的な気持ちを抱いていることが確認できる。また大学満足度は、「施設・設備」に関するハード面で最も高く(76.0%)、「授業・教育システム」「進路支援の体制」に関するソフト面で最も低い(ともに49.5%)ことが確認された。

Q
●現在の大学・学部に進学したときの気持ちとして、もっとも近いもの1つをお選びください。
●現在通っている大学について、どのくらい満足していますか。それぞれについて、あてはまるもの1つをお選びください。
 現在の大学生は、どのような気持ちで大学に進学したのか(志望度)。また、現在通っている大学について、どのくらい満足しているのか(満足度)。まず志望度について、図2-1-1によると、全体では「ぜひ入りたいと思って進学した」が32.4%、「まあ満足して進学した」が45.7%で、両者を合わせるとおよそ8割の学生は自分の所属大学に対して満足感を持って入学していることになる。性別でみても両者の合計値はほとんど同じだが、「ぜひ入りたいと思って進学した」という意識については男子(29.5%)よりも女子(36.6%)のほうがやや高い。

 近年、学生の進学に対する意識が変わってきている。従来であれば第1志望か否かという指標は、ある程度満足度と関連していたが、志望度と満足度が直接つながらない学生も増えてきている。8割近くが肯定的な回答をしているが、特に「まあ満足して進学した」と回答している学生の中には、多様な背景が含まれていることが考えられる。
図2−1−1 大学進学に対する意識(全体・性別)
 次に、現在所属している大学に対する満足度を、施設・設備、進路支援の体制、教員、授業・教育システム、大学全般の5つの側面でたずねた。図2-1-2によると、全体では「施設・設備(図書館やインターネットの利用など)」に関する満足度が最も高く(76.0%、「とても満足している」+「まあ満足している」の%、以下同)、次いで「大学全般を総合的に判断して」(64.1%)、「教員(専門性の高さやよい影響を受けるなど)」(53.1%)と続き、「授業・教育システム(教育内容やカリキュラムなど)」(49.5%)と「進路支援の体制(就職セミナーやガイダンスなど)」(49.5%)は同率で並んでいた。特に、ハード面での整備は学生にとって満足のいくものであることが結果からうかがわれる。カリキュラム等の「授業・教育システム」については、目下さまざまな取り組みが展開されているところであり、まだ十分に学生に成果が届いているとはいえない状況である。「進路支援の体制」についても全体では5割を切っているが、実際1・2年生はまだこうした機会を利用する時期になく、図2-1-3の学年別の結果をみると「判断できない」という回答も目立った。さらに3・4年生のみで満足度をみてみると、3年生54.5%、4年生51.8%(ともに「とても満足している」+「まあ満足している」の%)と5割を超えているが、まだ十分であるとはいえない状況である。
図2−1−2 大学満足度(全体)
図2−1−3 大学満足度:進路支援の体制(学年別)
 また、表2-1-1は大学満足度を学部系統別にみたものである。全体と比べ5ポイント以上高い項目がみられた学部系統は「教育」のみで、「教員」(教育58.1%>全体53.1%、5.0ポイント差、以下同)と「授業・教育システム」(54.6%>49.5%、5.1ポイント差)が挙げられる。教育系の学部では、文部科学省が推進する「GP事業*1」の中で、教員養成GPなる教員養成に特化した教育改革が独自に展開されていることなども、こうした数値に表れているものと思われる。一方、全体と比べ5ポイント以上低い項目がみられたのは「農水産」と「保健その他」で、「施設・設備」(農水産66.4%<全体76.0%、9.6ポイント差;保健その他67.8%<全体76.0%、8.2ポイント差、以下同)と「進路支援の体制」(39.2%<49.5%、10.3ポイント差;36.1%<49.5%、13.4ポイント差)が挙げられる。
  • *1 GP事業とは、各大学が自らの大学教育に工夫を凝らした優れた取り組みで他の大学でも参考となるようなものを公募により選定する文部科学省の事業の通称。なお、「GP」とは、大学教育改革の「優れた取り組み」という意味で国際的にも広く使われている「Good Practice」の略称。
表2−1−1 大学満足度(全体・学部系統別)
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