2021年 大学生の学習・生活実態調査【データ集】
大学生の学習・生活実態調査報告書
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成績

 大学の成績については、「優・良・可」のみで回答した学生(62.8%)が、「GPA」を記載した学生(37.2%)をはるかに上回った。「優・良・可」方式では平均して「優(A)」が4.7割を占め、「GPA」方式では平均値は2.7であった。

Q
あなたのこれまでの大学の成績について教えてください。なお5段階評価の「秀、優」の場合は「優(A)」と答えてください。
 学生の学修成果の達成度を測る1つの指標として、大学でこれまでにどの程度の成績をとっているかをたずねた。この成績はあくまで自己申告ではあるが、他の設問との関連をみていく際の客観的指標としてとらえられる。回答は「優(A)」・「良(B)」・「可(C)」・「不可(D)および未修得」のそれぞれの割合(ただし、5段階評価については、「秀」・「優」を「優(A)」とみなす)、あるいはGPA(小数点第1位まで)でたずねた。

 GPA(Grade Point Average)とは、米国で一般的に用いられている成績評価方法の1つである。授業科目ごとに5段階で評価し、評価の高い順から4、3、2、1、0と評価点をつけ、それらに単位数を乗じた合計値を求め、単位当たりの平均を算出した値である。現在、大学の成績評価の厳格化が求められるなか、履修科目全体の成績を数値化して履修指導や学習支援に役立てるGPAの導入が推進されている。

 表3-1-12表3-1-13をみると、有効回答数4,070名のうち、「優・良・可」で回答した学生が3,344名(82.2%)、「GPA」が1,515名(37.2%)であった(複数回答)。すなわち、両方を併記した学生が789名(19.4%)存在する。「優・良・可」のみを記した学生は2,555名(62.8%)であり、全体としてみれば、「優・良・可」の方式だけを用いるところがいまだ優勢といえる。

 全体の成績の分布については、「優・良・可」方式では、「優(A)」が平均して4.7割と半分近くを占め、成績は良好な状態にあるようである(表3-1-12)。「GPA」方式では、平均値は2.7で、3.1以上が34.5%と約3分の1を占めている(表3-1-13)。米国では、卒業要件として2.0以上を求めるのが通例だが、その点からみれば、2.0以下の比率が18.5%(より正確には、2.0未満は14.3%)であることはやや問題だといえる。米国流にGPAを退学勧告や進級・卒業判定の基準として運用するケースは日本ではまだ少ない。そうした運用まではいかなくとも、本来、こうした学力不振の学生にきめ細かな学修指導を行うためにGPAが活用されるべきであって、当該学生にも適切な対応がなされていることが望ましい。

 この成績を属性別に検討すると、第1に、性別では、男子よりも女子のほうが成績が良いことがわかる。これはふだんの授業への取り組みが、女子のほうがまじめなことの表れでもある*1表3-1-12によれば、「優(A)」の割合は「男子」(4.3割)<「女子」(5.2割)と女子で高く、表3-1-13によれば、GPA3.1以上が「男子」(28.7%)<「女子」(43.4%)と10ポイント以上差がついた。ただし、「女子」はGPA1.0以下で男子をやや上回っているため、GPAの平均値でみればそれほど大きな差とはなっていない。
  • *1 第3章第1節「大学での授業への取り組み」(表3−1−5)を参照。
表3−1−12 これまでの大学の成績:「優・良・可・不可および未修得」の割合(全体・性別)  表3−1−13 これまでの大学の成績:GPA(全体・性別)
 第2に、学部系統別では、「教育」の成績が良いようである。「優・良・可」方式では、「優(A)」の割合が「教育」(5.5割)>「全体」(4.7割)で最も高い(表3-1-14)。GPAについては、学部系統によってサンプル数に多寡があるため断定的なことはいえないが、平均値が「教育」(2.9)>「全体」(2.7)と高い結果を示した(巻末の基礎集計表参照)。
表3−1−14 これまでの大学の成績:「優・良・可・不可および未修得」の割合(全体・学部系統別)
 もう1点特徴的なのは、「教育」と「保健その他」で「不可および未修得」の割合が低いことである。表3-1-15によれば、「不可および未修得」が「0割」、すなわち全くなかったという回答が7割を超えている。「保健その他」の学生がまじめに勉強し、「教育」の学生が積極的にグループワークに参加する傾向がみられることはすでに述べたが、両学部では「履修登録した科目は途中で投げ出さない」という回答もまた全体より高かった*2。このように成績については、学生自身が単位取得に対してまじめであることも影響しているだろうし、職業資格の取得のために必修科目が多く、カリキュラムが過密であって単位を落とせない状況にあることも関係していると考えられる。
  • *2 第3章第1節「大学での授業への取り組み」(表3−1−7)を参照。
表3−1−15 これまでの大学の成績:「不可および未修得」の割合(全体・学部系統別)
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