大学生の学習・生活実態調査報告書
   PAGE 9/9 前ページ
 以上のように、所属している学部系統によって、(学生が感じている)得られる能力には相当の差異がみられることが確認された。

 以降は、さらに学習成果を規定する要因を探求するために、他の質問項目から「大学で力を入れてきた活動(10項目*1)」と「授業の経験(19項目*2)」を選出し、分析・検討を行う。その際、学習成果に関する項目が28個、関連をみる変数がそれぞれ10個と19個で、マトリクスを作るには、膨大となり結果も煩雑になるため、まず学習成果に関する28項目を因子分析(主因子法、Promax回転)という手法を用いて、統計的に意味のあるまとまり(項目群)を導き出すことにする。

 分析の結果、最も簡便に理解できる4つの因子(互いに関連のある項目群)が導き出された(表3-2-2)。1つめは、批判的思考やセルフコントロール、専門や教養に関する知識といった全般的な態度・技能で構成されており「全般的技能」(18項目)と命名した。2つめは、コンピュータや図・グラフ作成といった内容から「数的処理」(5項目)と命名した。3つめは、外国語や国際的視野に関する内容から「外国語」(3項目)と命名した。4つめは、リーダーシップや社会参画に関する内容から「積極的態度」(2項目)と命名した。以降の分析は、28の学習成果に関する項目を集約した4つの因子により分類した項目群にもとづいて行うこととする。
  • *1 第2章第1節「入学以降力を入れてきた活動」を参照。
  • *2 第3章第1節「授業の経験」を参照。
表3−2−2 大学生の学習成果に関する因子分析結果
 まず、さまざまな正課・正課外のどのような活動に力を入れることが学習成果の高低に影響を与えるのかについて検討を行う。具体的には、10項目の力を入れた活動それぞれにおいて、「とても力を入れた」と「まあ力を入れた」と回答したものを高群、「全く力を入れなかった」と「あまり力を入れなかった」と回答したものを低群として、両群における4つの学習成果因子の平均得点の差を比較する。表3-2-3によると、「大学の授業」に力を入れた学生は、そうでない学生に比べて「全般的技能」「数的処理」「外国語」の3つの学習成果因子において高い値を示した。

 このことから、当然のことではあるが、大学(生)の中核活動である授業に力を入れることが総体としての学習成果にポジティブな影響を及ぼすことが示唆された。ただし、本調査で設定されている学習成果項目が比較的授業を想定したものになっているため、ここで正課外活動がさしたるポジティブな成果をもたらしていない、と結論づけることはできない。
表3−2−3 大学で力を入れてきた活動と学習成果の関連
 ここで「授業」が学習成果に対して持つ効果の大きさが示されたわけだが、では具体的に授業にかかわるどのような活動が学習成果を高めるものとなっているのだろうか。次は、「授業の経験」との関連について検討する。

  具体的には、19項目の授業経験それぞれにおいて、「よくあった」と回答したものを高群、「ほとんどなかった」と回答したものを低群として、先と同様、両群における4つの学習成果因子の平均得点の差を比較する。表3-2-4によると、すべての学習成果因子にポジティブな影響を与えている教授・学習活動は、「教員と学生が授業時間内にコミュニケーション(議論・質問・対話など)がとれる授業」「上級生や下級生と授業時間内にコミュニケーション(議論・質問・対話など)がとれる授業」「インターネットやメールなどを利用して、授業以外でも教員や学生とコミュニケーション(議論・質問・対話など)がとれる授業」「提出物に教員からのコメントが付されて返却される授業」「学生の意見や授業評価の結果を反映させた授業」「グループワークなどの協同作業をする授業」「ディスカッションの機会を取り入れた授業」「プレゼンテーションの機会を取り入れた授業」「コンピュータやインターネットを活用する授業」「自分の進路や適性について考える授業」と19項目中10項目みられた。

 そのなかでも特に高い効果を上げているのが、「教員と学生が授業時間内にコミュニケーション(議論・質問・対話など)がとれる授業」や「ディスカッションの機会を取り入れた授業」で、アクティブ・ラーニング(能動的学習)の中でもとりわけ「ことば」を媒介とする活動が有効であると考えられる。他にも、たとえば「学生の意見や授業評価の結果を反映させた授業」については、実際の学生の学びとつながっているのかといった批判もあるが、学生の意見や評価をきちんと授業改善に反映させることで学習成果が高められていることが結果よりうかがえる。

 また「高校で勉強する教科の補習授業」や、「大学での勉強方法を学ぶ授業」といった、いわゆるスタディ・スキルに関する活動については、一部を除き大きな差はみられなかった。このことから、スキルや方法を知識として伝達するということよりも、個々の授業実践の中の具体的な活動レベルで取り込み、それらを通じて学習成果が高められるという可能性が示唆された。これらすべてを1つの授業の中に盛り込むことは到底不可能であるが、それぞれの授業の内容・目的に応じて効果的に活用していくことで、トータルとしての学生の学びに効果をもたらすことにつながるだろう。
表3−2−4 大学での授業の経験と学習成果の関連
   PAGE 9/9 前ページ
目次へもどる 調査・研究データ