第4回学習基本調査・高校生版
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 第1章 学習基本調査の結果からみえること

耳塚 寛明        


 学習基本調査は今回で第4回を数える。第1回調査(1990年)が実施されてから今回の第4回調査(2006年)までの十数年は、それまで不易と考えられてきた日本の教育システムが音を立てて動いた、変動の時期であった。

1.“ 脱受験競争時代”がみえてきた第3回調査(2001年)

 2001年の第3回調査を終えてみえてきたのは、少子化の進行と高等教育収容力の維持を背景として、やさしくなった大学入試がもたらす“脱受験競争時代”の高校生の学習実態だった。


 第一に高校生の家庭での学習時間は全体として減少を続け、平均70分あまりとなり、学習離れはどこまでも進むようにみえた。第二に、達成意欲の減退が目立った。高学歴志向にかげりがみられ、成績アスピレーション(どのくらいの成績がとりたいのか)が低下し、「ほどほどの大学」志向が強まった。第三に、高校生の意識の中での“受験プレッシャー”が明らかに低下した。先生や保護者からの勉強や受験に関する圧力を感じる高校生が減った。


 何がそうした変化をもたらしたのだろう。私にはそれが次のような3つの要因が重なり合って生まれた現象に思われた。「少子化による受験競争の客観的緩和」、「学歴志向や学習の価値を相対化する言説の浸透」、「ゆとり教育」である。

 少子化の進行は、大学の実質的な収容力を拡大させ、大学入試は著しく広き門になった。相変わらず高等教育のエリートセクターは狭き門だが、えり好みさえしなければ四年制大学へ入ること自体は難しいものではなくなった。高学歴志向や学習の価値を相対化する言説の普及は、若者の学校生活や学習からの離脱を促進した。たとえば、エリートのパーソナリティは歪んでいる、受験勉強は将来役に立たない、学歴を志向するより自己実現―これらは、若者の学習離れを促した。


 こうした言説の説くところは、世論を背景に教育政策もまた共有していた。教育政策の政策仮説は、長く、いかにして熾烈な受験競争から青少年を解放し、彼らの生活にゆとりと真の学びを取り戻すかに置かれ続けた。教育政策は「受験競争諸悪の根源説」に支配され、このまなざしから自由にはなれなかった。マスコミや世論も同罪である。その結果が、「ゆとり教育」、教育内容の厳選、新しい学力観、自ら学ぶ意欲などの諸教育政策・理念の導入であった。

 高等教育に進学する者が増加し、高校が進学シフトを経験した1990年代以降、皮肉なことに学びを離脱した大量の高校生を高校は抱え込むことになった。

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