学習基本調査・国際6都市調査報告書
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第2章 各国の研究者による調査結果の分析


1.ソウルの調査結果の特徴に関する分析

金 美蘭(韓国教育開発院研究員)

 (1)調査背景

 韓国では、小学生の日常生活や学校生活に関する調査が多くなっている。近年、小学校段階での私教育費の支出、早期教育および早期留学の副作用が大きな社会問題になっているためである。英才教育を行う塾の選抜試験準備を目的とした課外※1(塾や家庭教師など)を受けるという現象まで起きている。人格形成の重要段階である小学生への加重な学習負担と競争主義が、さまざまな教育の問題や社会問題の背景になっているという批判も多い。そのため学級崩壊をはじめ、いじめ、校内外の暴力、不登校などの学校問題のみならず、青年失業、フリーターなどの社会問題に対応するため小学校段階から実態調査が行われているのである。韓国教育開発院では、2003年から小学校の学校教育実態を分析するための『学校教育実態及び意識調査』をパネル調査として設計して、3年ごとに調査している。韓国青少年政策研究院でも小学校4年生を対象に青少年の進路、逸脱、余暇などに関する実態と意識を調査する『青少年パネル調査』を2004年より実施している。最近では社会階層両極化(二極分化)による教育格差が社会的関心を集め、初期段階の教育格差の実態を明らかにするための調査も多くなっている。韓国教育開発院では2005年度に小学生(4年、 5年、6年)の生活実態と意識、行動などを分析するために『韓国における小学校の生活及び文化実態調査』を実施している。韓国教育課程評価院でも2002年から小学校3年生の『基礎学力診断評価』を実施し、基礎学力低下の原因を探っている。
  しかし、国際比較の視点で設計された調査研究は少ない。学校システムや教育課程など韓国の特殊性を反映した調査設計が難しいからであろう。今回の「学習基本調査・国際6都市調査」でも韓国の「裁量活動」の位置づけが議論になった。「裁量活動」とは2001年から実施されている第7次教育課程により導入されたもので、「教科教育課程や特別活動のように計画的に意図された教育活動以外に、小学生の教育的要求を包容する広義の学習活動」と定義され、年間34週かけて週2時間の単位で行う総68時間の授業活動である。学校によって扱っている内容も異なり、科目名としない学校もあるが、重要な意味を持つため今回の調査では調査項目に入れた。また韓国においては1997年より小学校3年生から英語が必須科目になっている。調査対象である小学校5年生は、第7次教育課程により意思疎通のためのオーラル授業を中心に週2時間の英語授業を受けている。したがって、習い事の「外国語」の中には学校の授業の補習の意味で行っているケースも多く、その解釈には注意が必要である。

※1 韓国での「課外」は、学校外での学習機会をさしている。

 (2)分析対象

 今回のソウル調査はソウル市の小学校19校を対象に行われた。そこで収集された有効サンプル数は1,300名で男子50.8%、女子48.5%である(無回答・不明0.6%)。ソウルの場合には漢江の南の江南と北に位置する江北との生活格差が大きく、小学生の課外活動などの学校生活はもちろん成績も大きく異なるため、ソウルの25区を江南と江北に分けてサンプリングしたが、ここではソウルの小学生の学習実態の概観にとどめ、その詳しい分析は別の機会を借りることにする。
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