学習基本調査・国際6都市調査報告書
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 【学校生活に関して】


1.休み時間の様子
   子どもたちの楽しそうに遊ぶ姿は世界共通である。晴れの日には外でかけっこやボール遊びなどをして遊ぶ。冬場は寒く天気の悪い日も多いので、室内で過ごすことも多い。塗り絵、お絵かき、本読み、粘土などで遊ぶ。上級生が下級生にゲームや遊びを教えたり、低学年でけんかやいじめなどがないように見回る姿もみられる。
 休み時間には、教職員が交代で子どもの安全と治安の監視にあたる。その監視当番は校長・教頭を含めた管理職や補助教員も順番で担当する。休み時間の外遊びから校内に移動するときには、朝と同様にクラス担任のもとで一列になり教室へ向かう。
 休み時間や放課後に、子どもたちや教師が校舎を掃除することはなく、学校に雇われた清掃専門のスタッフが掃除をする。

2.給食時間の様子と「フルーツタイム」
   昼食はランチボックスと呼ばれるお弁当を持参、あるいは学校給食の選択ができる。学校によっては、お昼を食べに自宅へ帰る選択も可能である。ランチボックスには、サンドイッチ、フルーツ、野菜スティック、クスクス、サモサなどのメニューが入っている。
  近年、子どもたちの肥満や健康への配慮のために、学校給食の改善が促進された。この政府の動きには、テレビで人気のシェフが学校給食の改善運動を起こしたことも影響した。政府が発行したガイドラインでは、果物や野菜、温かい食事を提供することなどが規定された。子どもたちはポテトチップスやチョコレート、炭酸飲料などを持参することはできない。
  また、学校給食のメニューには、ロンドンではとくに、子どもの信仰する多様な宗教やアレルギーへの配慮もある。複数用意された主食のメニューの中から、たとえば、ラザニア、ピザなど自分の食べたいものを選択し、グリンピースや人参などの茹でた野菜、レタスやトマトなどの生野菜、ポテトや果物などから好きなものを選び、1枚のプレートの上にのせて食べる。クリスマスにはローストディナーなども提供される。
  健康的な食生活の習慣を身につけるために、低学年では午前中の休み時間の前に「フルーツタイム」と呼ばれる時間があり、新鮮な野菜や果物あるいは牛乳などが無料で支給される。低学年において、学校で野菜や果物などを食べる習慣を身につけさせることで、家庭でもそれらを食べる習慣の定着化を図ることが期待されている。

 【イギリスの教育制度の特徴】

1.重要な保護者のかかわり 
 イギリスでは、子どもの教育に関する保護者の役割や責任は、非常に重要である。義務教育制度においても、子どもが学校で教育を受けるのか、あるいは家庭で教育(ホームエデュケーション)をするのかは、保護者が選択できる。ほとんどの家庭が学校教育を選択するが、子どもの就学義務は保護者の責任である。1996年教育法では、子どもがきちんと学校に行くのは第一義的に保護者の責任であると明記した。1997年の「子育て命令法(Parent-ing Order)」では、子どもの無断欠席や不当な欠席が多い場合には、最高1,000ポンドの罰金を保護者に命じることも規定された。
   学習教科に関しても、保護者の判断で、自分の子どもが宗教や集会、そして特定の体育の授業を不参加とする要望を出すこともできる。

2.教師が授業に集中できるための配慮
   イギリスでも教師は多忙感を募らせている。教師が授業に集中できる環境を整えることで、子どもの学力の向上を図り、教師の仕事と生活のバランスも確保できるように、2005年9月より“PPA”と呼ばれる時間が導入されている。教師の10%の時間を授業の計画と準備と評価(Planning, Preparation and Assessment)にあてる政策である。そのための財源も確保され、教師を補助する職員も雇われている。
 イギリスの学校では補助職員が仕事をする場面が多くみられる。たとえば学習支援員(Learning Mentor)が情緒面・行動面で不安定な特定の子どもを補助したり、補助教員(Support Assistant)も多く、また教育実習生(Student Teacher)が入ることも多い。英語を母語としないエスニックマイノリティーの児童が多い学校には、EMAG教師(EMAG:Ethnic Minority Achievement Grant)も配置される。
 学校の設備としても、教師がくつろぐ場所であるスタッフルームと呼ばれる部屋がある。日本の職員室にあたるこの部屋は、机はなく、その代わり、ソファーとテーブル、冷蔵庫や電子レンジ、皿洗い機や湯沸かし器、皿とカップなどが備えつけられている。子どもたちの休み時間や昼食時間は、教師もこのスタッフルームで休息をとる。授業を離れて気持ちをリフレッシュすることは、授業の質を高めるためにとても重要だと考えるからである。

 【まとめ】

 以上、ロンドンの小学生の学校生活について記述してきた。イギリスにおける大きな特徴は、子どもの教育についての約束事や連携が、学校と家庭の契約に基づく合意のもとで行われていることである。保護者には、子どもの就学や学校の選択、無断欠席への罰金、送迎の義務などが課されている。これらは逆をいえば、保護者の教育への関心や関与のしかたにより、子どもたちの学習面での達成や将来の選択が大きく異なることを意味する。つまり、このように保護者を巻き込んで、学校が提供する教育の質の向上や、学力の向上を図ろうとしているのである。
 しかし、ロンドンのような民族的・文化的多様性が顕著にみられる都市では、家族形態や価値観そして教育に対する考え方もさまざまである。今後、継続してこの国際調査が行われるようであれば、異なる地域や学校を訪問したり、あるいは今回と同じ地域を訪問することでその変化をとらえたりすることも可能であろう。

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