授業と家庭学習のリンクが子どもの学力を伸ばす -学力向上のための基本調査2008より

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第2章 授業改善と結びつけた家庭学習充実の取り組み構造モデルの提唱/
2-3 子どもの家庭学習と総合学力との関係/2.子どもの「家庭学習力」と総合学力との関係/
【3】宿題と自主的学習の取り組みパターンと教科学力との関係

図表2-3-16は、この関係を示すものである。宿題と自主的学習の項目は、家庭学習力の項目からとっている(図表の注記参照)。宿題、自主的な学習いずれにも取り組めていない子ども(パターンD)はもちろんのこと、宿題か自主的学習のいずれか一方の学習にとどまっている子ども(パターンBまたはC)よりも、いずれにも取り組んでいる子ども(パターンA)の授業理解度、教科学力がともに最も高いことを表している。授業を大切にして宿題にきちんと取り組むとともに、自主的な学習にもしっかりと取り組むことの重要性が確認できる。

この図表から、パターンAに属する子どもは、小5生で6割強、中2生で4割となっている。ただし、このパターン分けは、各項目の肯定的回答者(「とてもあてはまる」「まああてはまる」の回答者)を「○」、否定的回答者(「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」の回答者)を「×」と2分したものに基づいており、それゆえ、同じパターンの中においても子どもの状況は一様ではなくある程度のグラデーションが存在していることに注意してほしい。

また、宿題=受動的学習、自主的学習=能動的・主体的学習と機械的に捉えることは適切ではないことにも留意したい。能動的で主体的な学習姿勢が確立している子どもにとっては、宿題をすることも、それだけでなく授業を受けることそのものも能動的・主体的な学習であり得る。宿題・授業の子どもにとっての意味は、子どもの主体的な学習姿勢の確立の度合いに応じて変わってくると考えられる。図表から、宿題さえしない、あるいは宿題しかしない子どもが、小5生では3割強、中2生では6割程度存在している。受動的であれまず学習に向かわせること、そして受動的な学習から、いかにして能動的・主体的な学習へと子どもを誘っていくのかということが、多くの学校で課題となっているのではないだろうか。

●おわりに

本文中で「家庭と学校とは子どもの生活・学習システムとして一体である」という考え方を述べた。子どもの家庭学習の在り方を見直し充実を図ることは、このシステムにある種の変更を加えることを意味する。しかし、システムの変更は、原理的にシステム構成要素である学校自身にも何らかの影響、すなわちその変更をともなわざるを得ない。家庭学習の在り方を考えることは学校の授業・教育活動の在り方を考えることと表裏一体である。本節の表題は「子どもの家庭学習と総合学力との関係」としているが、家庭学習の重要性のみを一面的に強調する意図のものではないことを念のためお断りしておきたい。

以上、子ども調査の結果を見てきたが、詳細にふれなかったり、紹介をも省いたりした項目も少なくない。本文中でも記したように、今回の調査項目全体の基礎集計をご覧いただきたい。

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