第3章 「教師の指導力」「家庭の教育力」「学校の経営力」と子どもの総合学力との関係
−基本仮説の検証
3−1 教師の指導力と子どもの総合学力の関係
ベネッセ教育研究開発センター主任研究員 田中勇作
はじめに
第2章では、今回の「学力向上のための基本調査2008」(以下、「基本調査2008」と称する)の結果を概観する形で、子どもたちの家庭学習の実態や、家庭学習と教科学力との関係、そして家庭学習充実に向けての教師、保護者、校長の働きかけの状況について、個別にその傾向や課題を見てきた。
本章では、第2章1節で述べた、「基本調査2008」における6つの作業仮説について、「子どもの教科学力や家庭学習力」と、「教師の家庭学習指導力」「保護者の家庭学習支援力」ならびに「校長の家庭学習充実に関する経営力」等とのクロス分析を通して検証し、「家庭学習充実に向けての総合的な取り組み」の在り方について若干の考察を加えていく。
まず、本節では作業仮説1「『教師の家庭学習指導力』が高いほど、その教師が担当する子どもの『家庭学習力』は高い」について探っていくこととする。
1.「教師の指導力(FAN)」と子どもの教科学力および家庭学習力との関係
第2章1節で述べたように、今回の「基本調査2008」では、学力向上における教師の総合的な取り組みを「教師の指導力(FAN)」「家庭学習指導力(Enrich)」および「授業連動力(Link)」という3つの観点から捉え、それら3つの力の総合的な発揮が子どもの総合学力の育成につながっているという基本仮説モデルのもとに調査を設計した(第2章1節の図表2-1-5参照)。
ここでは教師における3つの力の総合的な発揮状況と総合学力との関係を探る前に、それぞれの力との関係を見ることとし、まずは、先行する「基本調査2004」で提唱した「教師の指導力(FAN)」に関する教師の自己評価と、子どもたちの教科学力および「家庭学習力」の関係について概観したい。
