授業と家庭学習のリンクが子どもの学力を伸ばす -学力向上のための基本調査2008より

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第4章 家庭学習充実と授業改善を結びつけた取り組み−実践編

 実践報告に学ぶ

大阪教育大学教授 木原俊行

4つの学校の家庭学習指導等に関するレポートは、極めて示唆に富むものである。その特長を筆者なりに整理してみたい。まず、複数の学校の取り組みに共通する工夫を指摘し、その後、各学校の取り組みのすぐれた点について言及する。

1.複数の学校の取り組みに共通する工夫

次のような4点の家庭学習指導等の工夫は、複数の学校の取り組みに共通している。

(1)家庭学習の内容・方法の多様化

いずれの学校においても、家庭学習の内容・方法の多様性に関する理解がしっかりとしている。そして、それは、授業において育成を図る学力のとらえ方の刷新、つまり知識・理解に偏重した学力観からの脱却と連動している。

例えば、広島県三次市立三和小学校(以下、三和小学校)の実践では、同校は思考力・表現力の育成を研究主題に掲げているので、家庭学習課題にも、「任意単位を家で探してもってくる」「任意単位を使って自分の机の長さを測る」といった、創造的な活動が定められている。

また、東京都足立区立梅島小学校(以下、梅島小学校)では、食育の重要性にかんがみ、夏休みに、親子で弁当のメニューを考える、そのために親子が共同作業や対話を繰り広げるといった、ユニークな取り組みが実施されている。

子どもの学力が総合的であるならば、家庭学習の内容、その質にも当然広がりが生まれよう。実践校の報告はいずれも、それを再確認させてくれる。

(2)「教えて取り組ませる」家庭学習

4校ともに、子どもに対して、家庭学習の意義を説くだけでなく、それを進めるための方法をていねいに指導している。例えば、大阪教育大学附属平野中学校(以下、附属平野中学校)では、シラバス内に、「ノート活用法」といった側面から、家庭学習への取り組みの留意点が記されている。

また、栃木県栃木市立皆川中学校(以下、皆川中学校)では、教師たちが、テスト範囲表に「学習のポイント」欄を設け、「身に付けてほしい学習内容」を具体的に子どもに示している。

(3)補充指導の充実

授業と家庭学習の接点として、複数の学校で、放課後等の補充指導が営まれている。そして、そのシステムが整備されている。例えば、三和小学校では、補充指導のための組織体制として、学校長が指導を担当するという戦略を用いている。また、皆川中学校では、補充指導の際に、子どもに、「学習予定表」等を提出させて、彼らの家庭学習の計画・実施を促している。

なお、補充指導の担当者については、4校からはレポートされなかったが、例えば保護者や地域住民、教員志望学生等のボランティアの活用等が普及しつつある地域も少なくない。

(4)家庭学習充実に向けた保護者との連携・協力−そのためのアプローチの工夫−

いずれの学校も、保護者に対して子どもの家庭学習のサポートを依頼している。そして、そのアプローチを工夫している。例えば、三和小学校では、PTA総会や地区懇談会において、家庭学習の支援を家庭に要請しているが、後者においては、子どもの学力実態に関するデータを提示し、サポートの必要性やリクエストの妥当性をアピールしている。

また、梅島小学校では、「我が家の子育てプラン」というリーフレットを作成して、家庭学習支援に関して、保護者を啓発している。同時に、リーフレットにはチェック表を載せて、保護者に子どもの生活を点検してもらっている。つまり、リーフレットに保護者の関わりを促す道具としての機能を持たせている(教師が保護者の協力の実態を把握するための道具ともなる)。

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