授業と家庭学習のリンクが子どもの学力を伸ばす -学力向上のための基本調査2008より

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第5章 家庭学習力向上への学校・教師の取り組み
−家庭学習力向上へのトータルデザイン

5-1 家庭学習の指導と授業改善をどう結びつけるか


大阪教育大学教授 木原俊行

1.家庭学習を生かした授業改善の実践的課題

第2章4節 教師の家庭学習充実と授業との連動の取り組み状況」では、小・中学校の教師が、現在、家庭学習に何を期待し、それをどのように実践しているかについての概略を確認した。ここでは、その内容をさらに掘り下げて、家庭学習を生かした授業改善の実践的課題に迫りたいと考える。

(1)家庭学習指導力の実践的課題

「学力向上のための基本調査2008」(以下、「基本調査2008」)では、家庭学習指導力の実態を明らかにするために、教師を対象にして「ここ3年間において、あなたが子どもたちの家庭学習の充実に向けて取り組んでいることとして、次のようなことはどの程度あてはまりますか」という問いを投げかけた(全24項目)。「とてもあてはまる」「どちらかといえばあてはまる」「どちらかといえばあてはまらない」「あてはまらない」の4つの選択肢による回答を4〜1までの得点に換算して、教師全体の回答平均値を求め、それが高い項目(5項目)と低い項目(5項目)を抽出した。その結果は、図表5-1-1、図表5-1-2のようになる。

まず小学校と中学校の実践傾向に大きな違いがあることが分かる。小学校の教師たちは、明らかに「宿題をやってこない子どもや家庭学習が十分でない子どもに対しては、始業前や休み時間、放課後等にやらせるようにしている」といった「プログラム的指導」によく取り組んでいる。また、「毎日かならず今日の授業の振り返りや次の授業への準備をすること等を習慣づけるように指導している」といった「学びの土台作り」に関しても比較的よく取り組んでいる。

しかしながら、中学校の教師たちの回答には、そのような傾向は確認できない。よく実践されている手だてには、「指導の土台作り」や「学習ガイダンス」に属するものが確認される。中学校は、教科担任制を敷いているので、いわゆる教科の独自性に応じて、家庭学習に関する指導にも、自然に多様性が生まれているのか、それとも、それは教師間の意見交換の不足によるものなのか――両方のケースが考えられよう。したがって、中学校では、小学校にもまして、家庭学習の指導に組織としてどのように臨むのかについて、そのポリシーの明確化と周知徹底が必要とされよう。

さらに、小学校の教師たちの家庭学習指導にも、複雑な状況は存在している。例えば、先に、よく実践される傾向にあると述べた「プログラム的指導」の範疇に属する「クラス共通の課題に加えて、子どもの理解状況や興味・関心等に応じた個別的な課題も宿題として用意している」という項目については、「とてもあてはまる」および「どちらかといえばあてはまる」と回答した教師の割合は、50 %を下回る。また、「形成的評価と指導」に属する「家庭学習の成果に対する評価規準や判断基準を明確に示すとともに、成績にしっかりと反映させている」という項目の実践率がかなり低いことをあわせて考えると、「家庭学習の個別化」が小学校教師たちにとっても重要な実践課題になっていると言えよう。

小・中学校の教師ともに、実践率が低いのは、「本や文章、資料を読み、自分の考えや意見、批評等を書かせて読解力を高めるような課題を宿題として出すようにしている」「校内や教育センターの教材データベースやインターネットサイト等からドリルや教材を入手し、宿題や家庭学習教材として活用している」「家庭学習の意義や役割から、計画の立て方、具体的学習方法、評価規準等をまとめた『家庭学習の手引き』等を作成し、随時活用させている」の3項目である。これらは思考力や表現力の育成、ICT活用、自己学習能力の涵養といった、家庭学習の新しい課題・方法に関係するものである。第2章4節でも述べられているように、高次な学力を育成するための家庭学習の「質的工夫・充実」に、小・中学校の教師たちがいっそう力を注がねばならないことが、こうした整理においても確認された。

図表5-1-1:家庭学習指導力の上位及び下位項目(小学校)
図表5-1-2:家庭学習指導力の上位及び下位項目(中学校)

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