授業と家庭学習のリンクが子どもの学力を伸ばす -学力向上のための基本調査2008より

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  第5章 家庭学習力向上への学校・教師の取り組み−家庭学習力向上へのトータルデザイン

5-3 家庭学習充実への校長のマネジメント戦略

兵庫教育大学大学院准教授 大野裕己

はじめに

周知のように、子どもの成長を取り巻く環境変化に対する課題意識を背景に、この数年の間に家庭教育の在り方や学校と家庭の接点に関わる法制度がつくられており、それへの対応が学校に求められてきている。2006年には、教育基本法が全面改正され、教育を通じて実現を目指す国民としての資質(態度)としての「教育の目標」を新たに規定すると共に、「家庭教育」「学校、家庭及び地域の相互の連携協力」の規定が新設された。この教育基本法改正に伴って2007年に改正された学校教育法及び同施行規則では、義務教育の質の保障の文脈において、各学校に学校評価の実施(保護者や地域住民等による学校関係者評価を含む)を求める規定と各学校からの保護者等への教育活動・学校運営状況に関する情報提供を求める規定が新設された。以上の法改正は、各学校、特に校長に対して、各学校レベルでの家庭学習充実に向けたマネジメントや、本調査でいう保護者への家庭学習支援力向上へのアプローチの確立など、新たな対応課題を投げかけているといえる。

この点、これまで本報告書で提示してきたように、調査結果からは家庭学習充実への学校経営力(総合スコア)が高い学校において子どもの教科学力は高まる傾向が示され(図表5-3-1)、今後の学校経営においてやはり家庭学習充実に向けた取り組みやそのための保護者へのアプローチの要素を組み込むことが重要であることがうかがえる。

しかし、校長の立場からすれば、これまで日本の学校において、子どもの教育に関する多くの機能を校内で完結させる学校経営観(責任意識)が優勢であった中で、家庭学習充実の要素を組み込む新たな学校経営観への転換を図るために、どのような校長固有の行動が求められるのかは未だ明瞭ではなく不安も多いことと思われる。

本報告書(第3章3節)で既に述べられているように、今回の調査結果からは校長の取り組みと教師の指導力・保護者の支援力等との相関など、校長の行動と子どもの学力向上の影響モデルの詳細について、必ずしも充分に検証できていない部分がある。しかしながら、以上に述べた課題意識から、本節では、これまで示してきた本調査結果を確認しながら、あくまで試論としての提案といえるが、校長の経営行動の実践的指針を考察していくことにしたい。

図表5-3-1:「家庭学習充実の経営力」総合スコアと子どもの教科学力の関係(再掲)

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