授業と家庭学習のリンクが子どもの学力を伸ばす -学力向上のための基本調査2008より

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終章 今後の展望と子どもの学力を高める提言10か条
−家庭学習力向上へのトータルデザイン

早稲田大学大学院教職研究科教授 田中博之

それでは最後に、これからの学力向上に関わる研究の方向性の検討をして、イギリスの保護者憲章のあり方に学び、まとめとして、「子どもの学力を高める提言10か条」を提案したい。

1.これからの学力向上教育の方向性

これからの学力向上教育のあり方を提案するために、今後の研究課題として次の5点を提案しておきたい。

(1)子どものための家庭学習向上ポートフォリオシステムの開発

これは、特別活動や総合的な学習の時間を用いて、子どもが家庭学習の記録を付けて、それを継続的にグラフ化しながら、自己の家庭学習のあり方を診断して改善していくために必要なデジタル・ポートフォリオを開発する研究である。もちろんコンピュータを使わなくても、授業で子どもが記入できるワークシート集を作成してインターネットから配信するシステムを作ってもよいだろう。

(2)「家庭学習の手引き」の収集と分析

これは、現在全国の多くの教育委員会や学校が作成している多様な「家庭学習の手引き」を収集して、その共通点と相違点を分析することを通して、効果的な家庭学習のあり方を子どもと保護者にわかりやすく伝える手引き書の条件を整理し、そのモデル例を推奨する研究である。

(3)活用型学力の理論モデルの構築とそれを育む単元モデルと指導法の開発

三つ目に提案したいのは、次期学習指導要領で求められている、いわゆる「活用型学力」の理論モデルを構築して、それを育むためにどのような単元モデルと指導法が効果的であるのかを明らかにする研究である。

(4)活用型学力を育む小集団学習と学級づくりの研究

そして四つ目に、その活用型学力を育むために必要不可欠である、子どもの少人数による対話や討論を通した学習のあり方と、それに関連した学級づくりの新手法を明らかにする研究である。こうした研究が必要であるのは、活用型学力は、必ず子どもたちのコミュニケーションと協同的な問題解決を通して高められるものだからである。

(5)「言葉の力」の理論モデルの構築とそれを育む指導法の開発

そして最後に提案しておきたいのは、次期学習指導要領の改訂の重要なポイントである「言語活動の充実」による教育、いわゆる「言葉の力」を育てる指導と評価のあり方を探る研究である。

こうした新しい学習指導要領の改訂の方向性に沿った研究を行うことで、今日の学校改革や授業改善の基本指針と具体的な方法論を提供することができればと考えている。

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