授業と家庭学習のリンクが子どもの学力を伸ばす -学力向上のための基本調査2008より

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終章 今後の展望と子どもの学力を高める提言10か条/
2.イギリスの保護者憲章に学ぶ学校と家庭の連携

(3)保護者の教育ニーズに応じた学校改革の推進

もう一つの必要性は、保護者の声を学校改革の推進役にしようとしたことである。例えば、保護者憲章には、学校に対するいくつもの権利規定が含まれている。具体的に整理してみると、次のような項目になる。

●学校の教育活動について最新の情報を得ることができる
●学校の教育成果に関わる資料提供と説明を受けることができる
●自分の子どもの学習状況について資料提供と説明を受けることができる
●学校を選択することができる
●いつでも子どものことで専門員に相談することができる
●子どもの特別な教育ニーズに応じた教育を受けることができる
●学校理事を選んだり、それに立候補したりすることができる

このような多くの項目を、国が責任を持って保障するとともに、各学校でもこれを明文化することで、保護者の納税者としての権利を、そして、子どもを学校に通わせる義務を果たしたことによる対価としての権利を保障しようとしているのである。

もちろんこのことは、単に保護者の権利を保障するという意味だけではなく、保護者が多くの権利を実行できるような「力のある学校」に生まれ変わること、つまり、魅力と活力にあふれ、大きな教育成果を上げられる学校を創るために保護者の力を活かそうという教育行政の意図が隠されているといえる。言い換えれば、保護者の権利規定を通して教師の義務を明らかにしていると言えるのである。

(4)教師の労働権の保障

こうしてみると、イギリスの保護者憲章は、学校に対して多くのことを求めているばかりだと感じられるかもしれないが、実はそうではない。

保護者憲章の中に、前述した保護者の家庭教育に関わる義務と学校への協力についても多くの規定があるということは、実は、労働者である教師に、安全でやりがいのある職場を保障しようという国の責任を示したものであるといえるのである。

わが国では、教師の労働者としての権利というと、給与水準の向上の要求と、教育改革を押しつけられることによる負担増への抵抗という意味としてとらえられることが多いが、イギリスでは、児童生徒による授業妨害と対教師暴力のない安全な職場の実現ということに関わる権利意識が教師の間にはより強い。

このようなイギリスの教師の正当な権利意識は、わが国では、授業妨害と対教師暴力が各教員の指導力不足に帰因させられることが多い残念な状況を改善するためにも、その重要性がもっと認識されてもよいと思う。

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