中学校の学習指導に関する実態調査報告書2009―「学校外教育活動に関する調査」から

    PAGE 2/7 前ページ 次ページ

2.理科の学習指導(理科教員調査)
【解説】調査結果から読み取れること

2.先行実施における課題

それでは、理科担当の教員は、先行実施においてどのようなことが課題になると考えているのだろうか。たずねた8項目のうち、課題に「なっている」という回答が半数を超えたのは5項目である。「とてもなっている」と「まあなっている」の合計比率が多い順に、「3年間を見通しての指導計画の作成」62.0%、「実験・観察時数の確保」60.5%、「文部科学省の配布する教科書補助教材での指導」56.1%、「指導・準備にかかる教員の費用負担」54.3%、「カリキュラムの変更」54.1%となっている。

この結果からは、指導計画の作成やカリキュラムの変更など、先行実施による変更部分の指導計画づくりが課題になっている様子が表れている。単に学習内容が増えるだけでなく、「力の働きと力のつり合い」や「酸・アルカリ・中和」が1年生から3年生に移行するような変更もあり、3年間を見通すことにも困難を感じているようだ。また、新学習指導要領では、科学的な思考力・表現力の育成の観点から、観察・実験の結果を分析し解釈する学習活動の重視が謳われている。しかし、全体に学習のボリュームが増えるなかで観察・実験の時間をいかに確保していくかも悩ましい問題である。さらには、今年度から学習内容の追加に対応した補助教材を用いる必要があるが、このことにも戸惑いを感じている。全体に、3年間を見通したうえで今年度からの変更に具体的にどう対応していくかという部分に、課題を感じていると言える。

これに対して、「理科室の確保」(40.3%)や「指導教員同士の連携」(40.3%)は、課題になるという認識が相対的に低かった。学校の規模(クラス数や教員数)によって教室の運用や教員間の連携は困難度が異なる。小規模校ではこれらは課題になりにくいと推察され、相対的に比率が低いとはいえ、学校差があることを考慮する必要がある。

3.授業時数の増加に対する認識

次に、理科の授業時数増加に対する教員の認識をみてみよう。授業時数(全体)に関しては、「適切」が70.8%と多く、「増やし足りない」が22.5%、「増やす必要はない」が4.0%であった。増やす必要がないという回答は少数で、新学習指導要領でも不十分と認識している教員が2割強である。とはいえ、多くの教員は増える時数について適切だと感じていることがわかる。

では、それぞれの新規指導事項に対してはどう感じているのだろうか。「エネルギーに関する事項」「粒子に関する事項」「生命に関する事項」「地球に関する事項」にわけてたずねてみた。結果はいずれの項目でも、「適切」が7割を超え、「増やし足りない」は2割未満、「増やす必要はない」は1割未満だった。新規指導事項で増加する分量に対しても、多くの教員が適切だと判断している。

前述したように、多くの理科教員が前回の学習指導要領改訂で学習量の不足を感じており、学習内容が削減されすぎたことによる系統性の弱まりに対する課題も認識している。さらに、昨年度に実施した本調査でも、「子どもたちの自然体験の機会が減ってきている」を92.5%が、「子どもたちの科学に触れる機会が減ってきている」を84.9%が肯定しており、生徒の理科離れを危惧する思いも強い。今回の学習指導要領改訂は、学習内容の増加とともに、系統性を踏まえた指導を充実させることに力点が置かれている。このような変更を、多くの理科教員は肯定的にとらえているようだ。

以上、新学習指導要領の移行措置初年度において、理科担当の教員たちが移行措置や新学習指導要領に対してどのような意識を持っているかを検討した。現段階では実施にあたっての課題はあるものの、方向性については賛意を示す教員が多数を占める。しかしながら、実際に移行措置の初年度を終えた段階で、教員たちはどのような感想を持つのだろうか。学習内容の増加は段階的に進行する。その過程で現段階の課題は解消されるのか、別の課題が新たに浮上するのか……それらを継続的にとらえ、変革期において生じる問題の対策を考えていく必要があるだろう。

     PAGE 2/7 前ページ 次ページ
目次へもどる 調査・研究データ