「データで考える子どもの世界」
東京大学共同研究「学校教育に対する保護者の意識調査2008」
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 3.親の学歴による差異

 表2−1からまずわかることは、学校段階を問わず「父も母も大卒」グループの子どもの通塾率が一番高いだけでなく、1週間の平均通塾日数や1回あたりの平均時間も最も長いことである。そのためか、「父も母も大卒」グループでは、学校での費用を除いた習い事、塾、レッスンなどに、子ども1人あたり1ヵ月に2万円以上の費用をかけている比率が他のグループより高い。しかも、「父も母も大卒」グループの子どもに関しては、塾以外で1日の家での平均勉強時間も最も長いときているから、他のグループ、とりわけ「父も母も非大卒」グループの子どもに比べ、「父も母も大卒」グループの子どもは塾でも家でもより勉強していることになる。

 次に、生活の経済的ゆとりに関して「父も母も大卒」グループとその他のグループとでは歴然とした差があることも表から一目瞭然である。子どもの学校段階を問わず、経済的に「ゆとりがある」と答えた比率は「父も母も大卒」グループが過半数であるのに対し、同じ回答をした「父も母も非大卒」グループはなんと2割台にとどまっている。また、子どもの学校での成績についても、「上のほう・真ん中より上」であると答えた「父も母も大卒」グループの割合が半数を超えているのに対して、同じ答えをした「父も母も非大卒」グループは2割台と低い。経済的ゆとりがあるため、子どもの学校外での教育にもお金をかけることができ、それによって子どもの学校での成績が上がるという「良い循環」にある「父も母も大卒」グループと、その逆にあたる「悪い循環」にある「父も母も非大卒」グループのイメージが思い浮かぶ。

 さらに、「子どもに中学受験をさせる」と答えた親については「父も母も大卒」グループの割合がその他の親学歴グループよりはるかに高いことも表から読み取れる。経済的ゆとりがあり、子どもの成績も上のほうである「父も母も大卒」グループの子どもが公立学校から逃げ出すという「リッチ・フライト」(藤田2006)ないし「ブライト・フライト」(Kariya & Rosenbaum 1999)現象が今回の調査からも垣間見える。

 そして最後に、「子どもを四年制大学か大学院まで進学させたい」と答えた割合についても、「父も母も大卒」グループのほうがその他のグループよりも高く、また「父も母も非大卒」グループに比べるとその割合が倍以上であることが明らかになった。大学全入時代と言われている昨今にあって、小中学校の段階で「子どもを四年制大学か大学院まで進学させたい」と答えた「父も母も非大卒」グループの比率が3割台にとどまっているのが、いささか不思議ではあるものの、このグループの経済的ゆとりの乏しさや子どもの学校での成績を鑑みれば無理もないと納得してしまう。公立小中学校において「うさぎにはより遠いゴールを」設けることが子どもの差異化につながるかどうかについて議論する以前に、親の学歴によって子どもの間にすでにかなりの差異があることは明らかである。

表2−1 各親グループの特徴(2008年)
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