東京大学共同研究「学校教育に対する保護者の意識調査2008」
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 ◆分析編◆

 第4章 保護者は小・中学生の学校外教育費をどのように支出しているか

都村 聞人(東京福祉大学)



 本稿のねらいは、小・中学生の学校外教育費について検討を行うことである。第1に、子ども数・出生順位・子どもの性別と学校外教育費の関連について検討を行った。子ども数と出生順位については調査対象学年のなかではとりわけ小学5年生において学校外教育費に強く影響を及ぼしていた。すなわち、子ども数が多い場合に1人あたりの学校外教育費は著しく少なくなり、また出生順位が早いほど学校外教育費が多いという関係が見出された。子どもの性別に関しては、男子よりも女子に対して多くの学校外教育費を支出している傾向がみられた。家計の教育費支出における男女間格差の縮小につながっている可能性があり、興味深い。第2に、学校外教育費と保護者の成績の認知の関連について検討を行った。小学生段階では、成績を良好と認知するほど学校外教育費を多く支出していたが、中学生段階ではそうした関係はみられなくなり、むしろ成績を下位と認知するほど支出額が多くなる傾向があった。


 1.はじめに

 経済状況が悪化するなか、家計の子育てコストに対する関心が高まっている。子育てコストには、食料費、被服費、保健医療費、住居費、水道・光熱費など生活のための基本的養育費があり、そのうえに授業料、入学金、塾・習い事の費用などの教育費が加わる。ある試算によれば、1人の子どもが生まれてから大学を卒業するまでの22年間に基本的養育費は約1,640万円かかり、大学まで進学した場合の教育費は約1,345万円〜4,424万円かかると推計されている(AIU保険会社2005)。子育て世帯への公的な援助は少なく、家計の負担が重くなるなか、多くの世帯が節約行動により子育てコストを捻出している(都村2008b)。

 教育費の問題は、格差問題のひとつとして論じられることが多い。経済的に豊かな層ほど子どもの教育にお金をかけることが可能であり、経済的ゆとりのない層は子どもの教育に多くを支出することは難しい。経済的理由により高校を中退する、あるいは大学進学を断念するというケースも増加している。このようなケースは、単に子どもの進路希望を叶えることができないというだけでなく、教育達成や地位達成における機会格差に結びつくことになる。

 本稿では、小・中学生の学校外教育費の問題をとりあげる。学校外教育とは、塾、家庭教師、スポーツ教室、音楽教室などにおける教育を意味している。1980年代以降、可処分所得に占める教育費(学校教育費+学校外教育費)の割合は増加傾向にある(都村2006)。とりわけ、公立の小・中学生の場合には、学校の授業料は無償であり、家計の教育費のなかで学校外教育費の占める割合が高い。

 教育費は主として、ライフステージ(長子の年齢)、子ども数、世帯収入といった基本的な属性によって決まる(矢野1996;都村2006など)。長子の年齢があがると必然的に教育費は増大し、子ども数が増えると人数倍ではないものの負担は重くなる。世帯収入の影響力も大きい。とりわけ学校外教育費に関しては、武内・中谷・松繁(2006)によれば、所得階層が高いほど子どもの教育に投資する傾向があり、時系列でみてもその傾向が強まっている。また、近年では父親の収入だけでなく、母親の収入も学校外教育費に影響を及ぼしている(都村2008a)。教育費に影響を与える要因は、こうした属性要因だけではない。親の学歴や教育意識も教育費に影響を及ぼしている(尾嶋1997;古田2007)。また、時系列でみた場合、学校外教育費に影響を与える要因は変化しつつある。1985年と2005年のSSMデータを用いて学校外教育費の規定要因の変化を分析した結果によると、親の学歴や教育意識による学校外教育費の差は拡大していることが明らかになっている(都村2008a)。

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