放課後の生活時間調査

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序章  「子どもの生活時間」をどう考えるか


明石 要一(千葉大学教授)

子どもの生活時間はどう変わったか

子どもの生活時間は大きく変わっている。その「変化」を生活リズムから説明したい。私は、戦後60数年間の子どもの生活時間を15年サイクル、すなわち、次の四期に分けることができると考える。

1) 第一期【昭和20〜34年(1945〜1959年)頃】

この時代の子どもたちの生活リズムは「年中行事」を中心としていた。お盆とお正月、それから夏祭り、秋祭りという地域の行事を核にした生活時間があった。ゆっくりした生活リズムであった。

放課後の生活時間は十分にあった。だから、放課後まっすぐに家には帰らなかった。道草をして近くの神社やお寺の境内、それから空き地などで秘密基地を作ったりして、暗くなるまで友だちと外遊びをしていた。遊びほうけて、夕食時に半分眠りながら食べた経験をもっている。「明日を考えた」生活でなく、「今に生きる」生活をしていた。大人になって振り返ると「あの時代は楽しくてよかった」という子ども時代の思い出をもっている。

2) 第二期【昭和35〜49年(1960〜1974年)頃】

この時代には第一次産業従事者が半数を割り、給与生活者が半数を超える。それと同時に子どもの生活リズムのテンポが速くなり、「月単位」となる。
 この時期の子どもたちの生活時間はテレビとマンガというメディアに占領され始め、屋内での生活が増え始める。『少年サンデー』『週刊少年マガジン』(ともに昭和34年(1959年)創刊)、『少年ジャンプ』(昭和43年(1968年)創刊)、それから『マーガレット』(昭和38年(1963年)創刊)などの週刊少年・少女マンガが次から次へと発刊される。

子どものおこづかいのもらい方も変わってくる。それまではお年玉のように年中行事ごとでもらっていたのが、月単位でもらう子どもが増え始める。

3) 第三期【昭和50年〜平成3年(1975〜1991年)頃】  

第三次産業従事者が半数を超える。流通とサービス産業、それからIT産業に従事する者が多くなる。社会全体のテンポが速くなる。「花の金曜日(花金)」という言葉が生まれる。と同時に、子どもの生活リズムはますます速くなり「週単位」になる。1週間のスケジュールが頭にある「忙しい子ども」が出現する。

子どもたちは俗に言う三間(空間、仲間、時間)を失い、遊びが少なくなったのである。手帳を持つ子どもが出現するのもこの時期である。遊ぶときにはおたがいが手帳を見てスケジュールの調整をする。

また、昭和60年(1985年)の初めに出始めたテレビゲームに熱中する子どもが出現する。テレビとマンガ、そしてテレビゲームが友だちとなる。

4) 第四期【平成4年(1992年)頃から現在まで】

産業構造は第三期とあまり変わらない。しかし、シングルマザーの家庭が増え、全国で120万世帯を超える。年収が350万円以下の世帯が3割を超え、経済格差が広がる。母親の就労がますます増え、昼間に保護者がいない家庭の子どもが増え続ける。アメリカではすでに7割を超えているが、日本でも大都市では半数近くになっている。

子どもたちの生活リズムはやはり「週単位」であるが、忙しくて生活に追われ、友だちと深くかかわれない「独りぼっち」化現象が進む。と同時に、子どもの生活が大人と同じ生活スタイルになる子どもの「大人化」が始まる。手帳が必需品であり、栄養ドリンクを飲み、夜ふかしで朝起きられなくなる子どもが増えてくる。

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