放課後の生活時間調査

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第1部 学年別や性別にみる生活時間と意識

第1章 子どもたちの生活時間の構造
    −「2.5次行動」に注目した時間の使い方の分析−


木村 治生(ベネッセ教育研究開発センター教育調査課長)

<要旨>
本章では、選択できるが拘束性の高い行動(習い事、学習塾、部活動、アルバイト)を子どもに特徴的な行動として「2.5次行動」と定義し、そこに注目した分析を行った。2.5次行動は、必要度の高い1次行動や2次行動よりも、自由裁量の余地が大きい3次行動との関連が大きく、2.5次行動の時間が増える場合は3次行動の時間が削られる傾向がある。このことは子どもたちの「忙しい」という意識とも関係しており、2.5次行動の時間が長くなると、子どもたちは忙しさを強く認識することが明らかになった。

1.はじめに

時代とともに子どもたちが育つ環境は変化する。子どもたちが、時間をどのような活動にあてるかについても、変わってきたと考えるのが妥当だろう。たとえば、藤沢市教育文化センターが市内の中学3年生を対象に実施している調査(2006)では、1965年から学習時間が減少していることが示されている。こうした傾向については、近年、学力低下に対する不安が高まるなかで、子どもたちの「学習離れ現象」として問題視されている。さらに、テレビやテレビゲームの普及によって外遊びの時間が減少していることや、睡眠時間の減少をはじめとする生活時間の乱れを心配する意見も多い(たとえば、中村, 2004など)。パソコンや携帯電話のような新しい電子機器を使用する時間が増えていることに対しても、そうした乱れを引き起こす要因としての不安に加えて、子どもたちの人間関係の希薄化をもたらしているのではないかという不安の声が強いことが指摘されている(北田・大多和, 2007)。

このように、大人たちはつねに、子どもの時間の使い方(その時間に行われる行動)について注意を払ってきた。特定の時間(たとえば学習時間や外遊びの時間など)が減少すると、子どもの育ちに重要な機会が失われてしまうのではないかという危惧を抱いてきたし、別の時間(たとえば、テレビやテレビゲームなどに費やす時間など)が増加すると、悪影響の可能性を恐れて否定的な態度をとることが多かったといえるだろう。

それでは、子どもたちの時間の使い方について十分な検討がなされてきたかというと、必ずしもそうではない。総務省が1976年から5年ごとに行っている「社会生活基本調査」は我が国の生活時間調査の代表的なものだが、中心となる調査対象は大人である。このため、大人世代(20歳代以上)と子ども世代(10歳代)の大まかな違いは明らかにできても、子ども期に特徴的な活動については十分に明らかにされていない。これは、NHK放送文化研究所が行っている「国民生活時間調査」でも同様である。社会的な関心が高いにもかかわらず、子どもの時間の使い方に関する調査や分析は不足しているのが実状である。

本報告書はその不足を補うものであるが、本章では、子どもたちの生活時間の構造の全体像を明らかにすることを目的とする。とくに、子どもによる差が大きいと考えられる、生きていくうえで必要な活動や義務的な活動以外の時間の使い方がどのようになっているのかを中心に分析していきたい。

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