放課後の生活時間調査

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第1部 学年別や性別にみる生活時間と意識

第2章 自由時間の使い方にみる男女の違い


佐藤 香(東京大学社会科学研究所准教授)

<要旨>
習い事・学習塾・部活動・アルバイトなどで多忙化している子どもたちの自由時間(2−1参照)に焦点をあてて、男女による違いをみた。学校段階によらず、男子よりも女子で自由時間が長い傾向にあるが、女子の自由時間活動はテレビ視聴や携帯電話、音楽を聴くなど受動的なものが多い。また、年齢とともに自由時間活動を行う時間は長くなっていく。男子に好まれる活動と女子に好まれる活動は学校段階によって変化せず、好みが逆転するようなことはない。むしろ時間的な差は拡大する傾向がみられる。

1.はじめに

生活時間の視点からみると、日本社会の特徴として、男女によって生活時間が大きく異なる点が指摘されている。そのおもな理由は性別役割分業にある。一般に男性は仕事、女性は家事を主要な活動にしているため、必然的に時間の使い方が異なってくる。ただし、性別役割分業が顕著であるのは既婚者であり、未婚者の男女による違いは相対的に小さい。矢野眞和『生活時間の社会学――社会の時間・個人の時間』(東京大学出版会, 1995)では、結婚によって男性は仕事と家事が減少して睡眠と食事が増加するのに対して、女性は仕事を減らして家事を増加させるが、その二重負担から自由時間と睡眠時間が減少していると指摘している。

以上は成人についての特徴であり、性別役割分業の規範に縛られていない現代の子どもたちでは男女の違いは小さいだろう。授業時間や部活動の時間は男女とも共通しており、女の子だからといって家事の大半を行うわけでもない。前田愛は、『都市空間のなかの文学』(筑摩書房, 1992)において、明治時代を舞台にした樋口一葉の『たけくらべ』を、主人公の美登利が少年たちよりも早く子どもであることを卒業して大人の時間に入っていく物語としてとらえている。かつては、女の子は男の子よりも早く大人になることを求められ、また、認められていたと考えることができる。男女による結婚年齢の違いなども、その表れの一端であるかもしれない。

けれども現代では、男女によって大人になることを求められる時期が異なるということはない。このような、男女による違いが相対的に小さい子どもたちの時間において、その差がもっとも明確にみられるのは、嗜好に依存するところが大きい自由時間の使い方であると考えられる。本章では、放課後の生活時間のなかで、とくに自由時間の使い方に焦点をあてて、男女による違いと、学校段階による変化とをみていくことにしたい。なお、本章ではふだんの生活時間をたずねたアンケート調査の回答結果を用いて分析を行う。「ながら行動」を含めた生活時間の総量を把握することができるためである。

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