放課後の生活時間調査

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第2部 子どもの行動パターン別にみる生活時間と意識

第1章 平成の時代でも「寝る子は育つ」か


明石 要一(千葉大学教授)

<要旨>
平成の今でも「寝る子は育つ」の言い伝えは通用するか。調査結果から、「寝る子は育つ」は、小・中学生、そして高校生にもあてはまることがわかった。睡眠時間の「長い」(小学生9時間15分以上、中1・2生8時間15分以上、中3生7時間45分以上、高校生7時間15分以上)子どもの生活リズムは確立されている。しかし、気になるのは小学生で睡眠時間が「短い」(8時間以下)子どもの生活時間である。彼/彼女らのうち3人に1人は中学受験を目指し、中3生や高校生と同じ生活スタイルで暮らしている。大学受験、高校受験の縛りによる生活スタイルの変化が、今や「中学受験」という縛りへと前倒しされる現象が進んでいるようだ。

1.忙しい子どもの出現

平成に入り、忙しい子どもが出現した。NHKの30年ほど前の調査によれば、小学5年生の朝起きてから夜寝るまでの1日の歩数は23,000歩であったという。かなり行動半径は広い。一昨年、筆者が東京、成田、鳥取の小学5年生210名を対象に1日の歩数を調査した平均がほぼ10,000歩であった。この30数年で小学生の歩数は13,000歩減っている。子どもたちの歩く行動半径は狭くなっている。

また昨年、首都圏の小学6年生110名(3クラス)に「手帳を持っているか」の調査を行った。4割の子どもが「持っている」と答えた。持ってはいないが家の中のカレンダーに予定を記入している子どもは3割近くいる。スケジュールに追われる子どもたちが7割近くいるのである。

こうした忙しい子どもたちの出現で、子どもの行動半径が狭くなり、放課後は失われている。子どもを取り巻く環境は平成になってから大きく変わりつつあるのである。外遊びをして疲れ果て、夕飯を食べながら眠りこける子どもの姿を求めるのは不可能に近い。

子どもの生活スタイルが大きく変化するなか、日本で言い伝えられてきた「寝る子は育つ」は平成の今でも通用するのだろうか。本章はこの課題に答えようとするものである。ただし、医学的な視点でなく、子どもの生活スタイルという視点から言及する。成長ホルモンの分泌パターンからの生理学的なアプローチではなく、子どもの生活時間の実態と意識に関する調査から迫るのである。

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