放課後の生活時間調査

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第3部 時間の使い方の違いにみる意識や文化の差

第2章 放課後のすごし方と1年間のすごし方からみる「文化の格差」の問題


西島 央(首都大学東京准教授)

<要旨>
(1)放課後の習い事・学習塾・部活動・アルバイトなどの「かけもちパターン」(かけもち数)と、長期休暇や週末などに経験する活動や行事などの「1年間行事数」は、「親学歴」が高いほど多い傾向がある。
(2)「1年間行事数」の「少ない」割合が非常に高い「かけもちパターン」は、すべてしていないパターン、次いで、部活動だけしているパターンである。
(3)「親学歴」が低い場合、「1年間行事数」が多いほど「希望進学段階」が高くなる傾向がある。

1.はじめに 〜「文化の格差」への注目

小学校低学年のころ、私は、ピアノ教室、絵画教室、体操教室などと、いくつもの習い事に通っていた。ピアノを習っていることは、当時の男子にとっては恥ずかしいことだったのか、できるだけ内緒にしていた一方、クラスの友だちの多くが通っているそろばん教室や習字教室、そして学習塾に、自分も通いたいなあと思ったことが何度もあった。

高学年になって、週末の進学教室に通って中学受験を目指すようになるにつれて、習い事は次々とやめていった。クラスの友だちと放課後遊ぶこともない勉強漬けの毎日を経て、やっとの思いで私立中学校に入学してみると、少なからぬ同級生が小学校以来習い事を続けている。それもピアノではなくバイオリンを弾いたりしていることに驚かされた。

中学校では、部活動に熱心な友だちもいれば、授業が終わるとそそくさと帰って行き、どうやら塾に通っているらしい友だちや、放課後何をするわけでもなく、学校に残って遊んでいる友だちもいた。

そして、今。中学校でバイオリンを弾いていた友だちは、仕事とは別にバイオリンをアマチュアオケで弾いているし、ピアノは途中でやめたものの、部活動でサッカーを始めた私は、音楽教育や部活動に関する研究を仕事にし、週末にはコンサートに行ったりサッカーをしたりしている。

ここ数年、教育のさまざまな場面でも「格差」が問題となっている。その際、一般的には、学力、進路、意欲の格差と、その背景にある家庭の経済的な格差が問題とされる。しかし、上述の経験をふまえると、習い事などの趣味的な活動経験の差、つまり「文化の格差」もまた、子どもの将来を規定する重要な要因となるのではないだろうか。

「文化の格差」は、次の2つの次元で生じうる。第一に、毎日の放課後のすごし方である。放課後には、習い事や学習塾に行ったり、中学生なら部活動をしたり、高校生ならアルバイトをしたりできるが、あれもこれもする人もいれば、どれか1つだけをしたり、何もしなかったりと、かけもちのパターンは多様にありうる。第二に、1年間の余暇時間のすごし方である。長期休暇や週末などに、旅行に行ったり、映画を観に行ったり、家族で季節の行事をしたりすることがあるが、それらも、あれこれする人もいれば、あまりしない人もいるだろう。

そこで、本章では、毎日の放課後のすごし方に関する「かけもちパターン」と、1年間の余暇時間のすごし方に関する「1年間行事数」について、家庭の影響や、成績や希望進学段階などとの関係を検証し、「文化の格差」の問題について考察することにしたい。

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