ベネッセ教育総合研究所 「生きる力」を育むための新しい学習活動を考える
─児童・生徒の成長の姿を通して─

フォーラムを終えて

大阪教育大学助教授 田中 博之

 半日という短い時間ではあったが、子どもたちの「生きる力」を育てる新しい学びのあり方を探るために、とても充実した実践の提案と討論が行われたことを喜びたいと思う。
 「生きる力」を育てるための教育活動を積極的に行っている学校を、全国からお招きして、その成果と課題について忌憚なく語っていただいたことで、これから総合的な学習や中学校選択履修の研究を始めようとしている先生方にとって、価値ある情報が多く得られたことと思う。
 新しい学習指導要領の完全実施まであと半年というこの重要なときに、このような有意義なフォーラムを開催してくださった財団法人福武教育振興財団、そしてスタッフとしてご尽力いただいたベネッセ文教総研の皆様に、心から感謝したい。
 さて、このフォーラムで行われたすべての実践報告とパネルディスカッションをお聞きして最も印象に残ったことは、子どもたちの「生きる力」を育てることに成功している学校は、先生方が生き生きしているということである。もちろん、登壇していただいた先生方は、各学校においても特に溌剌として前向きな先生方に違いない。特にどの先生も、さすがに子どもたちに「生きる力」としてのコミュニケーション能力や自己表現力を育てているだけに、自己表現力が豊かであった。
 よく学校の先生方は、「たくさんの人の前で話をする機会がないので」とか、「文章を書く機会があまりないので」という理由をつけて、自分の自己表現力の足りなさのいいわけをすることが多いが、これからは、子どもたちにそうした力を育てる立場に立つわけだから、そのような弁解を考えるよりも先に、いろいろな研修会に参加してぜひ、このフォーラムでご発表いただいた5つの学校の先生方のような魅力的な自己表現のあり方を学んでいただければと思う。
 さらに、この5つの学校に共通していたポイントを紹介しておこう。1つめは、どの学校も、自分の学校の子どもたちにつけたい力の項目を整理して、それとの関わりでカリキュラムや単元の開発を意図的に行っているということである。
 言い換えれば、子どもたちに育てる「生きる力」を、自校の特色ある学校づくりとの関わりにおいて、個性的に定義することができているのである。「生きる力」という概念には、子どもたちに育てたい望ましい資質・能力が多く含まれているために、すべてを網羅して完全に育てることは実質的に不可能である。そこで、各学校で育てたい力に関わる目標の重点化をしているのである。
 2つめに指摘したいのは、カリキュラム構成の枠組みや評価の観点がしっかりとしているということである。最近になって、急いでカリキュラムの形式だけを整えたというのではなく、ここ数年をかけて、着実にカリキュラムの評価と改善を通して、学年の積み上げのあるカリキュラムづくりに成功している。やはり、研究の継続が生きていることが分かった。
 そして、3つめに、ありふれたことではあるが、それぞれの学校の特色や地域の特色を生かして、カリキュラムを構成しているということである。例えば、新設校という条件を活かして教員全員が関われるテーマを核に授業研究を進めたり、都心部からは遠くにあるからこそ子どもたちの国際交流に関わる「生きる力」を積極的に育てようとしたり、あるいは、伝統ある古都の豊富な人材を活かして郷土をテーマとしたカリキュラムを構成したりというように、その学校らしさが十分に発揮されていることがすばらしい。
 このような3つのポイントを、ぜひ参考にしていただければと願っている。

 各実践校へのコメント

 自己評価を通して21世紀型学力を身につける子どもたち

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