神奈川県の公立中学校の生徒と保護者に関する調査報告書

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第1部 親子関係・子育て
第3章 中学生の「反抗」の真実の姿

3.仮説

理論仮説1:反抗と自立心には明確な関連がない。

作業仮説1:保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりする子どもほど、ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える、とは言えない。

理論仮説2:反抗している子どもほど、生活満足度が低い。

作業仮説2:保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりする子どもほど、日常生活全般が充実していない。

理論仮説3:自立心のある子どもほど、生活満足度が高い。

作業仮説3:ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える子どもほど、日常生活全般が充実している。

まず、問題設定の節で述べたように、現代の中学生における反抗は「抵抗」よりも「反発」というべきもので、自立心の発達を伴っていないのではないか、と予測する。そのことを仮説1で検証する。また、反抗と自立が相関関係にないだけでなく、他の変数(この場合生活満足度)との関係においても違う性質を持っているということを仮説2および仮説3で検証する。反抗と自立は一括りにして語られることが多いが、仮説1〜 3からそのような語りが誤りであることを述べる。


理論仮説4:保護者とよく話をする子どもほど、反抗していない。

作業仮説4:保護者との会話頻度が高い子どもほど、保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりしない。

理論仮説5:保護者とよく話をする子どもほど、自立心がある。

作業仮説5:保護者との会話頻度が高い子どもほど、ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える。

次に、反抗と自立に影響を与えうる教育変数として、子どもがどれくらい保護者と話しているか、という指標を考える。そして、この教育変数が反抗に負の、自立心に正の影響を与えると予測する。これは仮説4および5に該当する。保護者による教育が反抗を緩和することがあるということを示すためだが、もしこの仮説が正しいことが証明されれば、先節で挙げた深谷ほか(2004)を乗り越えることができる。なぜなら、子どもと保護者との関係が良好であっても自立心が育つことがありうる、ということを示すことができるからである。


理論仮説6:保護者から非一貫的教育を受けている子どもほど、反抗している。

作業仮説6:同じことをしても怒るときと怒らないときがある保護者を持つ子どもほど、保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりする。

理論仮説7:保護者から非一貫的教育を受けている子どもほど、自立心がある。

作業仮説7:同じことをしても怒るときと怒らないときがある保護者を持つ子どもほど、ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える。

また、反抗と自立には似たような側面もある、ということをここで確かめる。保護者に対する反抗が起きる契機として保護者からの教育を考え、そのうちの1つとして、保護者の非一貫的教育態度を想定する。それが子どもの反抗および自立心に正の影響を与えるのではないか、と予測した。これは、保護者の非一貫性によって保護者への矛盾もしくは非絶対性に気付き、反抗および自立心を喚起する、ということが考えられるからである。以上のことを仮説6および7によって検証する。


理論仮説8:学力で統制しても、保護者から非一貫的教育を受けている子どもほど、反抗している。

作業仮説8:学力が上位の子どもも中位の子どもも下位の子どもも、同じことをしても怒るときと怒らないときがある保護者を持つ子どもほど、保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりする。

理論仮説9:学力で統制すると、学力が上位の子どもでは、保護者から非一貫的教育を受けている子どもほど、自立心がある。

作業仮説9:学力が上位の子どもにおいては、同じことをしても怒るときと怒らないときがある保護者を持つ子どもほど、ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える。

最後に、仮説6および7が正しいと実証されたとしたら、同じ非一貫的教育態度がどのような子どもに関しては反抗に影響し、どのような子どもに関しては自立心に影響するか、という疑問が浮かび上がる。統制変数を用いてそのことについて説明することを考え、学力という指標を取り上げる。これは、学力上位層と中下位層では保護者の矛盾への「気付き」に違いが生じる可能性があるからである。以上のことを仮説8および仮説9で検証するが、これによって非一貫的教育が学力に関係なく反抗に影響を与え、同時に学力によって非一貫的教育が自立に与える影響が異なってくる、ということを述べることができれば、仮説1〜 3が支持された場合に示される反抗と自立の相違性を補強することができるものと思われる。


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