神奈川県の公立中学校の生徒と保護者に関する調査報告書

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第1部 親子関係・子育て
第3章 中学生の「反抗」の真実の姿

5.分析

まず、作業仮説1「保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりする子どもほど、ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える、とは言えない」を検証する。次の表1は、保護者への反抗と自立心の関係をクロス集計で表したものである。

表1 保護者への反抗×自立心
表1 保護者への反抗×自立心

カイ2乗検定の結果、2つの変数に統計的に有意な関連がない、ということが明らかになった。また、保護者への反抗がある層とない層で割合の差を見ると0.4ポイントであり、関連がほとんどないと言って差し支えない程度である。よって、仮説1は支持された※7)。

次に、作業仮説2「保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりする子どもほど、日常生活全般が充実していない」および作業仮説3「ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える子どもほど、日常生活全般が充実している」を検証する。次の表2は保護者への反抗と生活満足度、表3は自立心と生活満足度の関係をそれぞれクロス集計で表したものである。

表2 保護者への反抗×生活満足度
表2 保護者への反抗×生活満足度

表3 自立心×生活満足度
表3 自立心×生活満足度

両者とも統計的に有意であり、保護者への反抗と生活満足度は負の、自立心と生活満足度は正の相関を持っていることが読み取れる。よって仮説2および仮説3は支持された。

それから、作業仮説4「保護者との会話頻度が高い子どもほど、保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりしない」および作業仮説5「保護者との会話頻度が高い子どもほど、ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える」を検証する。次の表4は保護者との会話頻度と保護者への反抗、表5は保護者との会話頻度と自立心の関係をそれぞれクロス集計で表したものである。

表4 保護者との会話頻度×保護者への反抗
表4 保護者との会話頻度×保護者への反抗

表5 保護者との会話頻度×自立心
表5 保護者との会話頻度×自立心

両者とも統計的に有意であり、保護者との会話頻度と保護者への反抗は負の、保護者との会話頻度と自立心は正の相関を持っていることが読み取れる。よって仮説4および仮説5は支持された。もちろん、この分析で示されたのはあくまで相関であって、「保護者との会話によって反抗が薄らぎ自立心が高まる」という因果関係を即座に読み取ることはできない。ただし、少なくとも、会話によって反抗が高まったり、自立心が薄らいだりするとは考えづらいことはわかる。

その次に、作業仮説6「同じことをしても怒るときと怒らないときがある保護者を持つ子どもほど、保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりする」および作業仮説7「同じことをしても怒るときと怒らないときがある保護者を持つ子どもほど、ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える」を検証する。次の表6は非一貫的教育と保護者への反抗、表7は非一貫的教育と自立心の関係をそれぞれクロス集計で表したものである。

表6 非一貫的教育×保護者への反抗
表6 非一貫的教育×保護者への反抗

表7 非一貫的教育×自立心
表7 非一貫的教育×自立心

両者とも統計的に有意であり、非一貫的教育と保護者への反抗および自立心は正の相関を持っていることが読み取れる。よって仮説 6および仮説7は支持された※8)。

最後に、作業仮説8「学力が上位の子どもも中位の子どもも下位の子どもも、同じことをしても怒るときと怒らないときがある保護者を持つ子どもほど、保護者の言うことに納得いかないと感じたり保護者に話しかけられても返事をしないことがあったりする」および作業仮説9「学力が上位の子どもにおいては、同じことをしても怒るときと怒らないときがある保護者を持つ子どもほど、ものごとがうまくいかないとき自分で原因や解決方法を考える」を検証する。次の表8は非一貫的教育と保護者への反抗の関係を、表9は非一貫的教育と自立心の関係を、それぞれ学力で統制した3重クロス表である。

表8において、学力上中下位層すべてにおいて非一貫的教育と保護者への反抗に正の相関が見られ、統計的に有意となっている。表9においては、学力上位層だけでなく学力下位層でも統計的に有意となり、学力中位層のみ統計的に有意となっていない。よって仮説8は支持されたが、仮説9は部分的にのみ支持された。

なお、表9において学力下位層で非一貫的教育と自立心に統計的に有意な正の関係が見られた理由として、仮説の節で述べたような保護者の非絶対性への気付きとは異なり、「保護者は信用できない」という不信感から自分でやるしかないという自立心が芽生える、ということが考えられる。また、学力中位層において統計的に有意でない理由として、保護者の非一貫性から学ぶというよりもその一貫性に何らかの意味付けを行ってしまい、自立心が芽生えないままになってしまっている、ということが考えられる。

しかし、いずれの理由付けもあくまで推測にすぎない。ここで重要なのは、保護者への反抗と自立心は非一貫的教育という同じ変数と正の相関を持つが、学力によって統制すると非一貫的教育と反抗および自立心の関係に違いが見られた、ということである。

表8 学力×非一貫的教育×保護者への反抗
表8 学力×非一貫的教育×保護者への反抗

表9 学力×非一貫的教育×自立心
表9 学力×非一貫的教育×自立心

〈注〉
※7 Q47Cと似たような自立の指標であるQ47B「わからないことや知らないことがあるとまず自分で調べる」でも以下と同じ分析を行い、ほぼ同様の結果が得られた。
※8 Q45Dと同様の内容を保護者に尋ねた質問であるHQ16D「あなたと子どもで意見が違うとき、あなたの意見を優先させる」でも仮説6および仮説7と同じ分析を行った。その結果、HQ16Dと反抗には0.1%水準で統計的に有意な正の相関があり、HQ16Dと自立心には統計的に有意な関連が見られなかった。親側のこのような意識が自立と関連するとは言えないということは、深谷ほか(2004)で述べられていた「自立を促すために親は弱みを見せなければならない」という意見が必ずしも真実ではない、ということを示唆していると言えよう。

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