神奈川県の公立中学校の生徒と保護者に関する調査報告書

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第1部 親子関係・子育て
第3章 中学生の「反抗」の真実の姿

6.結論

以上の分析から、以下のような知見が得られた。

①反抗と自立心にはほとんど関連がない

②生活満足度に対して反抗は負の、自立心は正の相関を持つ

③保護者と話すことは反抗には負の、自立心には正の相関を持つ

④非一貫的教育は反抗および自立心に正の相関を持つ

⑤④の関係を学力で統制すると、学力中位層では非一貫的教育と自立心に統計的に有意な関連がない

①より、中学2年生においては反抗と自立心にはほとんど関連がない、ということが示された。また②、③、⑤より、反抗と自立を一括りにして語ることが誤りである、ということも示された。つまり中学2年生では反抗していることによって自立心が育つ、ということは考えにくく、むしろ冒頭でも述べたように「反発」と言ったほうが適当であろう。そのような時期を、果たして「反抗期」と呼んでしまってよいのだろうか。自立心の発達を伴うような「抵抗」と混同して「反発」を「反抗期」と表すことによって、子どもへの無理解・誤解を生むことになってしまうのではないだろうか。すなわち、自立とは無関係なところで保護者の教育――④より非一貫的教育など――によって反抗的態度を取っている子どもを「この子は今反抗期で自立しようとしているのだからそっとしておこう」というように捉えてしまう、といったことが考えられるのだ。

③より、保護者とよく話す子どもでは保護者への反抗が緩和され、かつ自立も促されるということが明らかにされたので、保護者が自ら子どもと話す機会を手放してしまうのはもったいないと言える。もちろん、保護者に対して反抗的態度で接してくる子どもと話せ、と言われたところで簡単にはできないということも事実である。しかし、②より反抗と生活満足度は負の相関、すなわち反抗があるほど生活満足度も下がるという傾向にあるので、保護者と話すことは結果として子どもの精神衛生面にもプラスの影響を与える、と考えることができる。以上から、中学2年生のことを表すのに「反抗期」という言葉を使わない、あるいは「反発期」というような別の表現を用いることと、保護者は反抗的態度を取る子どもであってもできるだけ話すよう試みることを、本稿からの社会に対する提言としたい。

なお、本研究のこれからの課題として、今回取り上げた教育態度以外に反抗に影響する保護者の教育態度、あるいはまったく別の外部要因を探し、反抗が生じる仕組みについてさらに詳しく研究する必要がある、ということが挙げられる。また、今回の調査には中学2年生の現在の状況しか分析できないという限界があり、現在は「反発」だが将来的には反抗と自立が関連するかもしれない、と考えることも可能である。そのため、学年横断的な調査、あるいは1学年の追跡調査によって反抗を巡る環境をより広範に正確に捉えることが今後の課題である。

引用文献

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山本多喜司監・山内光哉編、1991、『発達心理学用語辞典』北大路書房.

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