神奈川県の公立中学校の生徒と保護者に関する調査報告書

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第1部 親子関係・子育て
第4章 「親密な」親子関係の裏側

6.分析結果

表1は、作業仮説1「簡易学力スコアが上位の子どもほど、自分はダメな人間だと思わない」の検証結果を示したものである。学力別に結果をみたところ、学力上位>学力中位>学力下位の順で、自己否定感が低いという結果が得られた。よって作業仮説1は支持された。これらの結果から、学力は、中学生の子どもの自信に少なからず影響を与えていることがわかる。

表2は、作業仮説2「簡易学力スコアが上位の子どもほど、つまらなくても穏やかに過ごしたいとは思わない」の検証結果を示している。学力別の結果をみると、学力上位>学力中位>学力下位の順で将来に対する安定志向は低い。よって作業仮説2は支持された。学力は子どもが積極的な将来像を描くかどうかといった将来意識にも影響を与えていることが読み取れる。


表1 学力×自己否定感
表1 学力×自己否定感

表2 学力×将来に対する安定志向
表2 学力×将来に対する安定志向

表3は、作業仮説3「自分の意見よりも親の意見を優先する(保護者優先型・相手優先型)子どもほど、自分はダメな人間だと思う」を検証したものである。結果、相手優先型>保護者優先型>自分優先型>子ども優先型の順で、自己否定感が高くなる傾向が確認された。よって作業仮説3は支持された。興味深いのは相手優先型において自己否定感が最も高くなっていることである。

思春期に入り、徐々に自分の意見や価値観が芽生え始めているにもかかわらず、親の期待や意向をくみ取り、期待に応えようとしてしまう(最終的には親の期待や意向を自己目的化してしまう)自分に対する苛立ちや歯がゆさが、自己否定感として表れているのかもしれない。

表3 意思決定の4類型×自己否定感
表3 意思決定の4 類型×自己否定感

表4は、作業仮説4「自分の意見よりも親の意見を優先する(保護者優先型・相手優先型)子どもほど、つまらなくても穏やかに過ごしたいと思う」の検証結果を示している。結果、相手優先型>保護者優先型>自分優先型>子ども優先型の順で、将来に対する安定志向が強くなる傾向が確認された。よって作業仮説4も支持された。

相手優先型や保護者優先型の子どもは、自分優先型や子ども優先型の子どもに比べ、親の意見や期待に沿った意思決定を行っているため、自分の希望や感情、意見を抑制していたり、自分自身が望んでいること以上の期待を親からかけられたりする中で、精神的に疲弊し、前向きな将来を描けなくなっているのかもしれない。

表4 意思決定の4類型×将来に対する安定志向
表4 意思決定の4 類型×将来に対する安定志向

表5は、作業仮説5「自分の意見よりも親の意見を優先する(保護者優先型・相手優先型)子どもほど自分はダメな人間だと思う傾向は、簡易学力スコアにかかわらず表れる」の検証結果を示したものである。結果、学力下位層を除いた学力上位層、学力中位層では、保護者優先型、相手優先型で自己否定感が高くなる傾向が確認された。よって作業仮説5は部分的に支持された。

表5 学力×意思決定の4類型×自己否定感
表5 学力×意思決定の4 類型×自己否定感

クロス表を見る限り、親子の意思決定の在り方は学力以上に自己否定感に強い影響を与えているようにみえるが、それらの規定力については後ほど回帰分析を行い確認する。

表6は、作業仮説6「自分の意見よりも親の意見を優先する(保護者優先型・相手優先型)子どもほどつまらなくても穏やかに過ごしたいと思う傾向は、簡易学力スコアにかかわらず表れる」の検証結果を示したものである。結果、学力上位層、学力下位層において統計的に有意となり、学力中位層では統計的に有意な差は確認されなかったが、学力上位層や学力中位層では、保護者優先型や相手優先型で、将来に対する安定志向が強くなる傾向が確認された。よって作業仮説6は部分的に支持された。また表6をみると、表5の3重クロス表と同様、親子の意思決定の在り方は学力以上に子どもの将来に対する安定志向に強い影響を与えているようにみえる。この点についても回帰分析を行い確認する。

表6 学力×意思決定の4類型×将来に対する安定志向
表6 学力×意思決定の4 類型×将来に対する安定志向

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