神奈川県の公立中学校の生徒と保護者に関する調査報告書

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第3部 社会関係資本
第2章 部活動が与える自己効力感への影響

3.仮説


理論仮説1:部活動をしている生徒は、自己効力感が高い。
作業仮説1:部活動をしている生徒は、自分の能力に対して自信を持っている。

理論仮説2:部活動に積極的に取り組んでいる生徒ほど、自己効力感が高い。
作業仮説2:部活動に力を入れて頑張っている生徒ほど、自分の能力に対して自信を持っている。

これまで、自己効力感と部活動を結びつけた研究はなされていなかったので、この2つの関連をまずみる。両者の間に関連があるならば、熱心に取り組んでいる生徒ほど自己効力感が高いと予測される。

理論仮説3:部活動における人間関係の良好な生徒ほど自己効力感は高いが、それは部活動に積極的に取り組んでいる生徒ほど社会関係資本子関係・子育て顕著である。
作業仮説3− 1:先輩・後輩と仲の良い生徒ほど、自分の能力に対して自信を持っているが、それは部活動に力を入れて頑張っている生徒ほど顕著である。
作業仮説3− 2:顧問の先生とよく話す生徒ほど、自分の能力に対して自信を持っているが、それは部活動に力を入れて頑張っている生徒ほど顕著である。

部活動は、通常の教育課程での活動では得難い、幅広く深い対人関係や集団活動経験を積む重要な機会となり、生徒の人格形成においても適応感育成においてもその教育効果には期待できるといわれている(高野・橘川2008)。そこで、部活動内の人間関係に着目して、その関係が生徒の取り組みの熱心さによってどう影響するのかをみる。ここで同輩を人間関係の中に入れていないのは、異年齢交流が、部活動と学級の活動の特徴をより明確に分ける要素の1つと考えられるからである。

理論仮説4:運動部に入っている生徒は、文化部に入っている生徒に比べて、自己効力感が高い。
作業仮説4:運動部に入っている生徒は、文化部に入っている生徒に比べて特に自分の能力に対して自信を持っている。

運動部は勝ち負けがはっきりと決まる活動内容なので、そこで成功経験のある生徒は、自己効力感が高いと予測される。一方、文化部は勝ち負けの決まる活動内容のものもあれば、芸術性の高い内容のものもあるので、運動部ほど自己効力感は高くないのではないかと予測される。

理論仮説5:運動部に入っている生徒は自己効力感が高いが、それは部への貢献度の高い生徒ほど顕著である。
作業仮説5:運動部に入っている生徒は自分の能力に対して自信を持っているが、それは今自分が部において役に立っていると思っている生徒ほど顕著である。

運動部において、ライフスキルの獲得についてはレギュラー生徒のほうが非レギュラー生徒よりも得点が高い(井伊2007)という研究があることから、レギュラーであるかどうかが運動部では達成場面として1つの重要な要素であると考えられる。それ以外にも、役員を務めていたりと、何かしら部に貢献している生徒ほど自己効力感が高いと予測される。

理論仮説6:運動部において、部への貢献度が低くても、部活動における人間関係の良好な生徒は自己効力感が高い。
作業仮説6− 1:運動部において、今自分が部において役に立っていると思っていない生徒でも、先輩・後輩と仲の良い生徒は自分の能力に対して自信を持っている。
作業仮説6− 2:運動部において、今自分が部において役に立っていると思っていない生徒でも、顧問の先生とよく話す生徒は自分の能力に対して自信を持っている。

部に貢献できる生徒は限られているが、それ以外の生徒は自己効力感が一様に低いのだろうか。達成場面に恵まれない生徒の自己効力感を底上げする要因として、人間関係に着目し、部内の関係が良好な生徒においては自己効力感も高いと予測した。

理論仮説7:文化部に入っている生徒も、部への貢献度が自己効力感に違いをもたらす。
作業仮説7:文化部に入っている生徒も、今自分が部において役に立っていると思っている生徒ほど、自分の能力に対して自信を持っている。

文化部は、運動部よりも活動内容の幅が広いため、一括りにして特徴を捉えづらく、先行研究でも文化部について扱っているものが見当たらない。囲碁や将棋といった大会のあるものや、吹奏楽や合唱といったコンクールのあるものなど、勝ち負けの決まる活動が含まれる一方で、演劇や園芸、茶道といった勝ち負けの決まらない文化活動も含まれる。だが、活動を行う上で達成場面は自分の能力を認識する上で1つの重要な要素だと考えられるので、運動部と同様に文化部においても、何かしら部に貢献している生徒ほど自己効力感が高いと予測される。

理論仮説8:文化部において、部への貢献度が低くても、部活動における人間関係の良好な生徒は自己効力感が高い。
作業仮説8− 1:文化部において、今自分が部において役に立っていると思っていない生徒でも、先輩・後輩と仲の良い生徒は自分の能力に対して自信を持っている。
作業仮説8− 2:文化部において、今自分が部において役に立っていると思っていない生徒でも、顧問の先生とよく話す生徒は自分の能力に対して自信を持っている。

運動部と同様に、達成場面に恵まれない生徒の自己効力感を底上げする要因として、人間関係に着目し、部内の関係が良好な生徒においては自己効力感も高いと予測した。

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