第2回子ども生活実態基本調査報告書
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4 何が「家庭での学習」を促すのか
  ―親子関係を中心に考える―    木村 治生

家庭的な背景が学習に与える影響

 家庭環境と子どもの学力が関係していることは、これまで多くの研究で実証されてきた(たとえば、耳塚2007、浜野2009など)。社会階層が高い保護者は学習の大切さを子どもに伝え、積極的に学校外の教育に投資を行う。その結果として、子どもは高い学力を獲得する。今回の調査は子どもを対象としたものであるため、階層の指標になる変数は父母が大学(短期大学を含む)を卒業しているかどうかくらいしか聞くことができていない。しかし、こうした変数でも明確に子どもの学習の差になって表れる。
 図4-1は、1週間トータルの学習時間の平均を、母親の学歴別に示したものである。これをみると、母親が大卒かどうかで、1週間あたり2時間から3時間30分程度の差が生じている。小学生ほど差が大きいこともわかる。父親の学歴別にみてもほぼ同様の結果である。こうした学習行動の違いは成績にも影響を与え、父母が大卒のケースのほうが成績(自己評価)も「上位」である割合が高い。このように、保護者のバックグラウンドが、何らかの形で子どもの学習に影響を与えていることは間違いない。
■図4-1 1週間の学習時間(学校段階別・母親の学歴別)
図4-1 1週間の学習時間(学校段階別・母親の学歴別)

親子の会話の積極的な意義

 それでは、学歴が高い保護者はどのような働きかけを子どもにしているのだろうか。
 今回の調査から明らかなのは、親子の間での会話の違いである。父親と母親のそれぞれについて、「学校でのできごとについて」「勉強や成績のことについて」「将来や進路のことについて」「友だちのことについて」「社会のできごとやニュースについて」の5つの話題をどれくらい話しているかたずねた。その結果を保護者の学歴別にみると、次のことが指摘できる(図表は省略)。
 第1に、父母のいずれも「大卒」のほうに会話が多い。学歴が高い保護者は、子どもへの働きかけが積極的である。第2に、その差は父親のほうに大きく表れる。母親は学歴に左右されずに会話が多いが、父親は「大卒ではない」ケースで会話が少ない傾向がみられる。第3に、その差は小学生に大きく、高校生になると縮小する。「大卒」の保護者は、子どもが小学生のうちに積極的に働きかけるためである。このように、「大卒」の保護者は子どもの発達によって関係性を変えている可能性がある。第4に、会話の中身も異なる。「大卒」に多いのは「勉強や成績のことについて」「将来や進路のことについて」「社会のできごとやニュースについて」などで、「学校でのできごとについて」や「友だちのことについて」などの日常的な会話は差が小さい。
 このような働きかけの違いは、学習行動にどのような影響を及ぼすのだろうか。図4-2で、親子の会話の量によって学習時間がどれくらい異なるのかを確かめてみよう。ここでは、父親との会話と母親との会話を得点化して合計し、会話量で「少ない」「中くらい」「多い」がほぼ均等に三分されるようにグループ化したうえで、それぞれの学習時間を算出した。ここからは、親子の会話量が多いほど、長い時間を学習に費やす傾向が読み取れる。この傾向は、小学生から高校生まで同様である。
 会話が豊かな家庭は子どもの精神的な安定をもたらし、より学習に向かいやすくする。また、会話そのものが知的な情報や学習の価値を教えたり、学習の目標や進路について考えたりする機会をもたらす。そうしたことが、学習行動に結びついているのだろう。
図4-2 1週間の学習時間(学校段階別・親子の会話量別)
図4-2 1週間の学習時間(学校段階別・親子の会話量別)
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