高校受験調査

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教育社会学の観点から

親子二人三脚の高校受験

大妻女子大学 酒井 朗

  今回の調査から浮かび上がったのは、高校受験をめぐる今日的な親子関係である。
  今回のアンケートは学校を通じての悉皆調査ではなく、インターネットによって実施されている。調査結果を読み解く上では、この点に留意しなければならない。母集団は調査会社のモニターであり、そこから該当者が抽出され、パソコン上で母親と子どもが答えるという方法である。このような方法が採用されたため、アンケート回答者は、親子関係がある程度良好な家庭が多いと予想される。
  この点をふまえて今回の調査結果を見てみると、アンケートに回答した親子は二人三脚で高校受験に取り組んでいることが分かる。端的な例が、志望校選びの情報源に関する質問の回答である。子どもへの「あなたは、志望校を決めるのに、次の項目のようなことをそれぞれどのくらい参考にしましたか。」という問いに対して、もっとも多かった回答は「保護者の話」で84.8%に達した。
  校外模試の結果も、担任の先生の話もそれには及ばず、「中学校が作成した進路指導資料(校内模試の成績も含む)」は59.6%にすぎなかった。業者テスト廃止前の高校受験と言えば、生徒の成績や内申点が最重要で、それで進路先が振り分けられ、三者面談では担任教師が親子に対して受験可能な高校を紹介し、時には親子を説得するといった印象が強かった。だが、今や学校の担任教師の話や学校側が提示する情報はそれほどの影響力や決定力を持たず、子どもにとっては親の話の方がより重要な情報源となっている。
  また、「あなたは、お子様の志望校を決めた時のことについて、次のようなことがどれくらいあてはまりますか」という問いに対して、母親の93.1%は「受験する高校を子どもと一緒に考えた」と答えている。子どもの側も、そうした母親の関わりに対して、それほど疎ましく思っているわけではなさそうだ。90.8%の子どもは「親はあなたの意志を尊重して志望校を決めさせてくれた」と答えている。「受験する高校のことで親と意見が食い違った」と答えた子どもは25.1%のみであり、「志望校を親に決めつけられた」と答えた子どもはさらに少なく、10.8%にしかすぎなかった。総じて、この調査に回答した親子は協同して受験に取り組むのであって、親子間の葛藤はそれほど大きくはない。
  今回対象となった子どもは、勉強時間は比較的長いようである。中学3 年生の9月で、半数くらいは2時間ないしそれ以上は学校や塾以外でも勉強している(図1)。ただし、勉強はほとんどしないという子どもも一定数おり、とりわけ成績の低い子どもには、直前になってもほとんど勉強しないという者が15%近くいる(図表非掲載)。

勉強時間(学校や塾の授業を除く)

注)「6時間以上」は「6時間くらい」「7時間くらい」「8時間くらい」「9時間くらい」「10時間くらい」「それ以上」の合計。

 親子二人三脚で取り組んでいるといっても、それほど必死に親子で高校受験に取り組んでいるようには見えない。「受験を振り返って」の質問項目で、子どもも母親ももっとも多かった答えは「まあがんばった」であり、子ども48.6%、母親46.6%である(母親は図表非掲載)。志望校を決める際に重視したのは、「自分の学力にあっている」で、94.9%の子どもが「重視した」と回答したが、「大学への進学実績がよい」というのは55.1%にすぎなかった。子どもの学力にあったところでもっともふさわしい高校を、親子が一緒になって選んでいる様子が目に浮かぶ。
  なお、本当に問題なのは、実はここでは見えてこない親子である。様々な理由により、親子二人三脚で物事に取り組めない家庭がある。かつてはそうした家庭の子どもも、学校で指導されて受験に取り組めた。だが、高校受験において家庭が主体になってくると、親子で協同して受験に取り組めない家庭の子どもは、ますます不利な立場に置かれるだろう。この点にどう対応するかが、今後大きな課題として浮かび上がってくる。

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