高校受験調査

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教育心理学の観点から

学ぶ意欲・やる気の観点から見た受験勉強

筑波大学大学院准教授 外山 美樹

■ 自律的な理由による受験勉強と高校入学後の学習意欲ならびに学校適応の関連
 心理学においては、自律的に行った行動は、適応的な結果と関連があることが示されている。受験勉強においても当然これがあてはまり、自律的な動機(理由)を持って受験勉強に取り組んだ生徒は、高校入学後の学習に対する意欲や学校生活における適応が高く、逆に、他律的な理由で受験勉強に取り組んだ生徒は、高校入学後の学習に対する無気力や学校不適応(ex. ドロップアウト)と関連すると言われている。
 ここで19 ページの結果を見ると、「親や先生に勉強するよう言われたから」といった他律的な理由で受験勉強をしていた生徒は、高校に入学してから「勉強しようという気持ちがわかない」と回答する者が多く(53.1%)、「勉強がわかること自体おもしろかったから」「勉強したことは、いずれ仕事や生活の役に立つと思ったから」といった自律的な理由で勉強していた生徒は、高校入学後における学習の意欲も高い。これは、受験勉強に対して、(" 親や教師、社会によって)させられている"ととらえるのか、(" 自ら望んで)している" ととらえるのかによって、物事(学習や課外活動など)に対する積極性などが異なってくるためと考えられる。おもしろい(おそらく得意な)教科では"おもしろいから" という理由で受験勉強できるのは当然であるが、おもしろくない(おそらく不得意な)教科においては、"将来こうなりたいから、自分の夢を実現したいから、将来に役立つから" といった自律性の高い理由で受験勉強することが、その後の学習意欲や適応につながるということになる。

■ 入学意欲と高校入学後の学校生活の関連
 不本意入学者は学校適応が良くないと指摘されているが、今回のデータでもそのことが裏づけられた。18 ページに示す通り、不本意入学者は本意入学者に比べて、「日常生活全般が充実している」「部活動に積極的取り組んでいる」といった高校生活の適応に関する内容において、あてはまると回答した者の割合が少ない。さらに問題は、入学したい高校がなかった無動機入学者である。無動機入学者においては、高校卒業後の進学先や将来の仕事について考えるといった将来展望の視点が他の者に比べて低い。
 近年の進路指導においては、卒業後(つまり、高校入学後)新しく迎える生活においてよりよく適応し、進歩向上していくことができるように、指導・援助することが重要であることが指摘されている。よって、進路指導の際には、"将来こうした職業につきたい" "将来こういう人間になりたい"など、生徒自身が自己実現の目標をもてるような配慮が重要になってくる。それが先にも述べた自律的な理由による受験勉強にもつながることになる。希望する高校に合格することは重要なことではあるが、第1希望ではない高校に入学することになったとしても、それが将来への目標を達成できる進学先であれば、高校入学後の学習意欲や学校適応はそれほど悪くはならないであろう。

■ 受験勉強における意欲・やる気を高める工夫
 受験勉強は長期間に渡って行われるものであるため(4ページ参照)、意欲・やる気を持続させることが受験勉強を乗り切るために重要になってくる。そのやり方や工夫は、11 ページで紹介されている。中3時の成績が上位の生徒ほど、受験勉強をするうえで自分なりの工夫やうまく乗り切るコツがあると回答しており(成績上位では49.3%、下位では16.9%)、そうした工夫やコツがいかに重要であるかがわかるだろう。学習を効果的に進めていくために、意欲・やる気を高めたり維持したりする方法は、心理学の知見からも明らかにされているので、それらを表2にまとめてみた。受験勉強における意欲・やる気を高める工夫やコツは、人によっても異なることが考えられるため、表2に示された方法の中から自分に合ったやり方を見つけることが大切である。

意欲・やる気を高めるための方略(伊藤・神藤 2003をもとに作成)

注)"方略"というのは,"方法"や"戦略"といった意味である。

引用文献
 伊藤崇達・神藤貴昭 (2003). 中学生用自己動機づけ方略尺度の作成 心理学研究、74、 209-217.

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