教育格差の発生・解消に関する調査研究報告書

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調査研究の概要


耳塚 寛明 (お茶の水女子大学大学院・教授)

この調査報告書は、文部科学省からお茶の水女子大学が委託を受けて実施した「教育格差の発生・解消メカニズムの調査研究」(平成18、19年度 新教育システム開発プログラム事業)のうち、平成19年度調査を中心に結果をとりまとめたものである。すでに文部科学省に対しては事業報告書(調査研究のまとめ)を提出済みであるが、委託期間が終了した後、あらためて研究成果を整理し、分析を補った上で、本報告書として刊行することとした。委託期間終了後の作業と報告書の刊行に際しては、お茶の水女子大学とベネッセ教育研究開発センターとの間で共同研究の契約を締結した。

1.調査研究のテーマ

「教育と格差の発生・解消のメカニズムの調査研究」

1)学力格差の発生メカニズム

(1)家庭的背景(家計所得や文化的環境)、(2)学校の特性(規模、教員、財源や教授法)、(3)地域特性(経済力、文化的環境)による、義務教育段階における学力格差の有無と程度を測定し、その発生メカニズムを明らかにする。

2)学力格差是正方策

学力格差の発生メカニズムを明らかにした上で、格差是正に有効な方策を、(1)国と地方の教育政策(資金援助、指導者派遣、教員配置等)および(2)学校運営と指導法改善方策の各レベルで提言する。

2.調査研究テーマ設定の背景・問題意識

1)義務教育の構造転換にともなうエビデンス・ベースの学力政策の設計

義務教育の構造転換が目指される中で、教育成果を測定し、そこから課題を発見し、さらに改善計画を立案・実行する政策サイクルの確立が求められている。教育成果のひとつである学力に関しては、教育課程実施状況調査等が実施されてきているものの、分析が指導法改善に資する範囲に限定され、財源の配分や人員配置をも含む広範囲にわたる教育施策に活用するための調査設計が不十分であった。

2)学力格差の発生メカニズムの研究

とりわけ、児童生徒間、学校間、地域間で見られる学力格差が、家庭的背景、学校特性、地域特性との関連でどの程度発生しているのかについては、少数の研究者による地域や学校を限定したケース・スタディが存在するだけであり、教育施策の立案には不十分なデータしか蓄積されていない。

3)学力格差是正方策の検討

学力格差の是正には、学校における指導法改善も不可欠と考えられるが、他方で財源や人的資源の投下も必要と考えられる。学力格差発生メカニズムの分析に基づき、どのような教育施策が国、地方、学校のレベルで有効であるのかの解明はこれまで十分には行われてこなかった。

4)個人情報を保護する新しい調査手法の開発

家庭的背景による学力格差の把握には、個人情報を保護しつつデータを蒐集するための新調査手法が必要である。従来の方法では限界がある。

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