教育格差の発生・解消に関する調査研究報告書

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学力調査問題解説


冨士原 紀絵 (お茶の水女子大学大学院・准教授)

今回使用した小学校5年生の国語・算数の学力調査問題は2006年ベネッセ教育研究開発センターによる「第4回学習基本調査・学力実態調査」で出題された問題の一部を改変したものである。問題の構成と出題の意図は同調査報告書に既に掲載されている(『第4回学習基本調査・学力実態調査報告書』を参照。以下、「報告書」と略す。なお、引用はすべてこれらのページ中による)。以下、1)では同調査報告書に沿って全体の出題構成を示し、2)では今回の調査における改訂点を示す。今回の学力調査問題は、本報告書資料編「調査票見本」に掲載している。

1)全体の出題意図とその構成

報告書によれば、調査問題は「学習指導要領にそった知識・理解」と「教科の知識・理解に依拠した、さまざまな場面設定での課題解決力」の2つの側面から学力を測定する目的で作成されている。とりわけ後者は「OECDの『生徒の学習到達度調査(PISA)』」と「公立中高一貫校の適性問題などで『思考力・判断力・表現力』を問うペーパーテストが頻出している現状をふまえた」としており、今日的な「学力」解釈の適用を試みた点でこの学力調査問題全体を特徴づけている。

国語、算数ともに大問3つで構成されており、両教科とも大問□1は前者の視点、即ち「現行の学習指導要領第4学年までの目標が達成されているかどうかを測定するという視点」で作成されている。大問□2と□3は後者の視点、特にOECD「生徒の学習到達度調査(PISA)」調査にみられた「数学的リテラシー」と「読解リテラシー」のフレームワークを参考にして作成されている。この大問□2と□3は新しいタイプの問題であることから、作問意図について踏み込んだ説明がされている。

算数の大問□2と□3についてはPISAの「数学的リテラシー問題にみられるような数学化の観点をふまえ、既習の特定の分野以外の問題への対応を測定する視点で、小学算数での学習内容を元にした問題を作成」、「既習の知識を用い、それぞれの状況設定の中で、数量関係を見い出して、その知識を活用する力を求める問題とした」とされている。大問□2は「グラフを活用する」問題、大問□3は「図形領域において埋め込まれている数的関係を見い出し活用する」問題である。ここから、大問のいずれも「既習の知識を活用」することが主眼とされていることがわかる。

国語の大問□2と□3に関してはPISAの「読解力(読解リテラシー)問題にみられる『非連続型テキスト』の理解や、読解プロセスの〈熟考・評価〉型設問への対応を測定する視点から問題を作成」し、さらに「文部科学省より2005年12月に発表された『読解力向上プログラム』での『3つの重点目標』を参考に、さまざまなテキストのタイプ」の中から出題し、「自分の意見を根拠とともに記述させる〈熟考・評価〉型の問題を大問内で出題するようにした」とされている。大問□2と□3ともに「読解プロセスの〈熟考・評価型〉」問題への対応を意図しているものの、大問□3の「グラフ・記事の理解」は3つの資料の総合的な解釈を要する「非連続型テキスト」の読解力を意識した点で、大問□2の「文学的文章の理解・評価」問題と異なっている。

なお、上記の調査問題がその目的を遂げているかどうかについて、算数では杉山吉茂氏が「日常生活の場面において、場面から必要な情報を取り出し、数学が使える状況に翻訳して、条件に合った最適な答えを導き出すという力を求めている。『PISA調査』の数学的リテラシー問題や『全国学力・学習状況調査』のB問題に通じる『知識を活用する力を測る』問題となっている」という評価をしている。

国語については堀江祐爾氏がPISA型読解力の「書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」とは「〈情報の取り出し−解釈−熟考・評価〉を確実に身につけるということである」という視点であり、例として大問□2の設問(1)を丁寧に分析し、この問題が「PISA型読解力のプロセスを有効に活用する力を測っているということができよう」と述べている。また「PISA調査が図、グラフ、表などの『非連続型テキスト』を読むことも『読解力』に含まれる」ことを問いかける調査であったことからすると「今回の出題はまさに今求められている『読解力』を測る調査問題ということができよう」と評価している(今回は大問□3が該当する)。

当該領域の専門家によって、既にこうした一定の評価がなされていることを踏まえつつ、今回の調査ではこの問題を利用することとした。

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