第4回学習基本調査報告書
   PAGE 2/10 前ページ 次ページ
 すべての項目を概観すると、10対の項目のうち8対の項目で10ポイント以上の変化があり、この9年で教員の教育観が大きく変わった様子が表れている。増減がもっとも大きいのは、「不得意な教科や領域の学力をつけさせること」(42.8%→72.0%、29.2ポイント増)と「得意な教科や領域の学力を伸ばすこと」(55.6%→25.6%、30.0ポイント減)である。98年調査では、半数以上の教員が得意な教科の学力を伸ばすことを重視していたが、そうした志向が大きく減り、07年調査では7割が不得意な教科の学力を伸ばすほうを重視するようになった。

  これと同様に、9年間での増減が大きい項目を確認しよう。
 「客観的な基準を使って、子どもを公平に評価すること」(57.8%→77.8%、20.0ポイント増)が増え、「直感的であっても、子どもの個性を重視して評価すること」(41.1%→19.9%、21.2ポイント減)が減った。7章で確認したように、通信簿の「学習の記録」で9割を超える学校が「観点別学習状況の評価」を取り入れているが、絶対評価になって観点ごとの客観的な評価が強く求められるようになっているのだろう。さらに、「教科書や指導要領の内容を、とにかく最後まで扱うこと」(60.7%→79.6%、18.9ポイント増)と「一通り終わりまでやれなくても、基本的な考え方を身につけさせること」(38.6%→18.3%、20.3ポイント減)も20ポイント程度の変化がある。学習すべき内容を最後まで扱うことを選択する教員が、8割近くになっている。

 また、「一人前の大人になるために必要なことを教え、訓練すること」(22.1%→38.3%、16.2ポイント増)と「子どもの持っている可能性が開花するのを、支援すること」(76.3%→58.5%、17.8ポイント減)の項目や、「授業の楽しさを多少犠牲にしても、学問的に重要なことがらを押さえること」(25.3%→40.0%、14.7ポイント増)と「学問的に重要なことがらよりも、子どもが楽しく学べる授業にすること」(72.7%→56.1%、16.6ポイント減)の項目の変化にみられるように、子どもの楽しさよりも教えるべきことをきちんと教えるべきだという姿勢が強まっていることがわかる。

 全体に、子どもの個性や自主性を尊重しようという意向や、教員は子どもをサポートする役割を担うべきだという教育観が弱まっていることが読み取れる。それに代わって、楽しさよりも学問的な重要性を考慮し、決められた範囲をきちんと教えて、その成果を客観的に評価するべきだという考え方が支持されるようになった。学習指導要領が改訂された2002年以降にとられている「確かな学力」向上のための施策や、教員に求めらるさまざまな社会的要請が、教員の教育観に影響を与えていると考えられる。また、8章で述べたように、教員の勤務が多忙になり、子どもと向き合う時間を確保することが難しくなっている。そうした余裕のなさが、個々の子どもの良さを伸ばすよりも、学力向上により効果があると思われる指導方法を優先する志向につながっているのかもしれない。
   PAGE  2/10 前ページ 次ページ
目次へもどる 調査・研究データ